ダイバーシティ推進室 > 知る > 外部機関でのシンポジウム・セミナー > 「介護に備えてのお金と制度の基礎知識」参加報告
更新日:2021年11月9日
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講師:竹下さくら氏(なごみFP事務所1級ファイナンシャル・プランニング技術士)
H27年度第2回男女共同参画セミナーとして、1級ファイナンシャルプランナーの竹下さくら氏による介護とお金に関するご講演がありました。
親の介護は、ある日突然始まります。介護を事前に想定していないと、対応が後手に回り、その結果、精神的、肉体的にも疲れ果ててしまいます。追いつめられて、介護離職をしてしまうと、経済的な負担がより大きくなります。介護を想定内のこととして、しっかりした心構えを持つためには、介護にかかるお金や利用できる介護制度について予め知っておく必要があります。
平成22年度に内閣府が行った「介護保険に関する世論調査」によると、家族に介護が必要になると困る点として半数以上の人が挙げたのは、「食事や排泄、入浴など世話の負担が重く、十分な睡眠がとれないなど肉体的負担が大きいこと」、「ストレスや精神的な負担が大きいこと」、「家を留守にできない、自由に行動できないこと」、「介護に要する経済的な負担が大きいこと」、でした。肉体的、精神的、経済的な負担が大きくなることで、介護をする側(介護者)が、「ストレスを感じ、介護をされる側に憎しみを抱き、虐待をしてしまう」可能性がでてきます。このような事態を回避するには、「介護サービス」を利用して、介護者の心身の負担をできるだけ減らすとともに、「介護休業制度(介護休職、短時間勤務、介護休暇、等)」を利用して仕事と介護を両立させ、経済的負担を最低限に抑えることが必要です。
仕事と介護の両立は大事です。介護離職をすると、「収入、退職金、年金額」が下がることから、貯金の取り崩しが始まり、老後に備えるお金が減ります。その結果、自分が老いたとき、自分のために使うお金が少ないので、子どもに頼ります。状況によっては、自分の老後の面倒のために子どもに仕事を辞めさせるという悪循環に陥ります。また、独身の若い男性の場合、介護離職をすると結婚の機会を失います。親の介護をしている収入が低い男性と結婚したいと望む女性は、それほど多くはないからです。さらに、この男性に兄弟がいて、親の遺産を兄弟で等分する場合、これまでの経済的負担分以上の分をもらえるとは限りません。以上のように、介護離職による経済的負担は、いろいろな方面に悪影響を及ぼします。介護離職はすべきではありません。
※ お知らせ
森林総合研究所 男女共同参画室は、この度、「介護のためのガイドブック」を作成し、平成27年度末に発行する予定です。介護にかかるお金、介護保険制度(介護サービス)、森林総研の介護に便利な制度をまとめています。介護を上手に乗り切るための参考にしていただけますと、幸いです。
このセミナーに出席して思い出したことがあります。今から5年ほど前に、介護離職を取り上げた報道番組がありました。その番組では、約10年前に介護離職をして母親の介護をしている50代の独身男性を紹介していました。その男性は、母親に介護が必要になった際、施設へ見学に行ったそうですが、希望に沿う施設が見つからなかったため、自宅での介護を選択しました。その後、母親の症状が悪化し、男性は働き盛りではありましたが、会社を辞めて、介護に専念することにしました。その結果、長期間の終わりが見えない介護による肉体的・精神的な疲弊、経済的な困窮に加えて、最近、男性自身が糖尿病を患い、体が思うように動かなくなったことで、自宅は壮絶な介護現場となりました… 。まるで、今回のセミナー内容を地で行くような男性ですが、決して他人ごとではありません。親の介護を想定し、仕事と介護の両立に必要な情報を事前に収集することの大切さを、このセミナーで痛感しました。
バイオマス化学研究領域 多糖類化学研究室 菱川 裕香子: 記
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