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更新日:2017年8月2日
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日時 | 2017年01月27日(金曜日) |
場所 | 日本アイ・ビー・エム株式会社(東京都中央区日本橋箱崎19-21) |
主催 | 筑波大学、日本アイ・ビー・エム、産業技術総合研究所 |
共催 | つくば女性研究者支援協議会 |
参加者 | 木材加工・特性研究領域 木材機械加工研 松村 ゆかり |
シンポジウムに先立ち、主催3機関およびつくば女性研究者支援協議会に所属する企業・研究所の女性研究者・技術者・人事担当者等46名の参加による非公開のプレセッションが開催されました。筑波大学の吉瀬章子氏と日本IBMの行木陽子氏による話題提供の後、各8~9名の5グループに分かれ、2つのテーマでグループディスカッションが行われました。テーマと、出された意見は下記のようなものでした。短時間のディスカッションでしたが、様々な所属、専門、立場からの生の意見が飛び交い、情報を整理するグループリーダーの方々が苦労される程でした。
テーマ1. 女性研究者・技術者がリーダーになっていく過程での課題とは?
時間的制約、女性の絶対数が少ないこと、ロールモデルの不足、マネージメントやリーダーシップに関するスキルの不足、家族・男性社員・女性社員間でのコミュニケーション、女性の意欲、周囲の理解・社会全体の価値観、等。
テーマ2. 課題を乗り越えるために必要な環境・支援として、組織ができることとは?
組織の柔軟性(人事、評価)、頑張りすぎていないロールモデル、若いうちからのリーダーシップスキルの教育、テクノロジーの活用(e-work等)、女性の絶対数を増やすための中高生への教育、固定観念の打破(男性・女性の意識改革)、等。
IBMフェローの浅川智恵子氏より、「ダイバーシティがイノベーションを創出する」というタイトルで基調講演が行われました。浅川氏は視覚障害を持つ自身の経験を交えながら、"アクセシビリティ技術(障害者や高齢者、非識字者といった情報へのアクセスが困難な人々の社会参加を支援する技術の総称)"の成り立ちから、"コグニティブ・アシスタント(日常世界における知的支援)"の最先端の技術開発まで、多くの事例を紹介されました。まだスマホもインターネットも無かった1980年代に点字がデジタル化され、90年代にはwebブラウザの音声読み上げ技術が開発される等、視覚障害者のための情報アクセス技術が発達したことと同時に、音声合成技術の進歩、音声対話技術が一般へ広まる基礎となったとのお話は、まさに「ダイバーシティがイノベーションを創出した」事例です。
1911年に創業したIBMでは、1914年に初めて障害をもつ社員が入社し、その後も社会貢献という立場ではなく、ビジネスの戦略としてダイバーシティを推進しているとのこと。浅川氏は、ハンディを個性と捉えてアドバンテージに変え、周りとフェアに競争できる環境にあったことで自分のスキルを活かすことにつながったと述べられました。
講演中の、「マイノリティの能力をうまく使えない組織(社会)は、マジョリティの能力も活かせないのではないか」、「イノベーションは多様な視点を合成することで生まれる。そのため、多様性のあるチームの方が、より多くの新しいアイディアを生み出すことができる。(Frans Johansson「The Medici Effect」より)」という言葉も印象に残りました。
プレセッションで上がった課題やアクションについての意見をふまえ、各組織のトップ層の方たちによるパネルディスカッションが行われました。日経BP社の麓 幸子氏をモデレーターとして、1.女性活用のメリット、2.時間の使い方・働き方改革、3.女性の昇進意欲、という視点から議論が進められました。
1.については、マイノリティを支援することはマジョリティのメリットにもなる。研究や技術開発の内容や能力には男女差はなくとも、マイノリティとしての視点が役に立つ。といった、まさに基調講演の内容に通じるものでした。
2.については、子育てをしながら働き続けられる環境が重要で、子育て中のタイムマネージメントは限られた時間で生産性を上げる訓練になり、その後にも生きてくる。リモートワークや裁量労働など、柔軟な働き方の経験をもつ企業の例を参考に、大学や研究所も取り組んでいきたい。また、働いた量を時間で計る風土を変え、何を生み出したかを評価する仕組みが必要。との意見がありました。
3.については、なりたくてなったわけではないが、選ばれて引き受けたからには男性がやらなかったことをやりたい、推薦してくれた人の期待に応えたい、といった、パネリストの方々の率直な思いを聞くことができ、ステップアップ時には誰しも不安を感じるが、背中を押してくれた先輩や共にがんばろうという仲間がいたことで一歩踏み出せた、というお話もありました。ちなみに、ある調査では、一般女性の45%が「管理職になりたくない」と考えているが、女性管理職の80%は「なって良かった」と答えたそうです。
全体の3割を超えないうちは、組織の中では少数派とのことですが、会場には女子学生の姿も多く見られ、組織のトップ層として活躍する先輩方のお話は、勇気と刺激を与えてくれたことと思います。
木材加工・特性研究領域 木材機械加工研 松村 ゆかり 記
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