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更新日:2017年9月28日

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産総研第11回ワーク・ライフ・バランスセミナー参加報告

  • 日時 2017年06月20日(火曜日)
  • 場所 産業技術総合研究所 つくばセンター中央 共用講堂2階 大会議室
  • 主催 産業技術総合研究所
  • 参加者ダイバーシティ推進室長 安部 久、樹木分子遺伝研究領域 田原 恒、木材加工・特性研究領域 松村 ゆかり

「男の看方(みかた)、女の見方(みかた)―人間関係とジェンダーの視点で介護のしかたを考える」

講師:平山 亮 氏(東京都健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム)

厚労省の調査(2013年)では、介護が必要な高齢者のなかで主に息子から介護を受けている人は16%で、娘(19%)や義理の娘(18%)と比べて少数派ではなくなってきています(ちなみに義理の息子は1%以下)。息子介護者が増えたのは、独身男性や非正規雇用が増えたから?というイメージを持たれやすいようですが、息子介護者の半数は既婚者ですし、介護が始まる前の就労状況は正規雇用が50%で、日本の男性全体の割合と同じだそうです。現在の少子化・高齢化の社会においては、配偶者や仕事の有無などのバックグラウンドに関わらずどんな男性でも介護者になる可能性があるからこそ、息子介護が増えてきた、ということでした。

妻との関係

「同居しているから当然妻が手伝ってくれると思っていたが、そっぽを向かれた。」
「基本的には自分がやっているが、妻は率先して協力してくれている。」
両者は対照的な状況ですが、「誰が何をするのか」という明らかな“交渉”が行われていないことが共通しています。
暗黙の期待をするのではなく、「してほしいこと」をコトバにして頼む。自発的に手伝ってくれているようでも、本来は妻がやるものだというプレッシャーを感じている場合もあるので、「期待していないこと(しなくてよいこと)」もコトバで伝える。それは、介護に限らず、家族にも限らず、普段の人間関係においても大切なことだと思いました。

きょうだいとの関係

日常生活に手助けが必要な親がいる女性(娘)は、ひとりっこや女きょうだいのみの場合より、男きょうだいがいる場合の方が“メンタル”が悪くなりやすいという調査結果があるとか。息子は親の状況を「まだ大丈夫」と楽観視したり、維持改善を求めるため手助けを最小限にしたりする傾向が高く、女きょうだいのケアを過剰に感じて対立することもあるそうです。また、男性には非常時以外に家族と定期的な連絡を取らない人が多いようですが、特に別居介護の場合には、きょうだい間の情報共有が重要です。

性別の組み合わせ

認知症の配偶者を介護するとき、「夫(男)の暴力を“適切に”おそれる妻」より「妻(女)の暴力を“見くびる”夫」の方がケガをする例が多いそうです。これは息子と母の場合にも当てはまり、「母(女)なら“おさえこめる”」と考えることでケガをさせてしまう場合も。
子供が親の衰えを感じるときというのは、父と母では異なり、母の場合は家事や家族の世話ができなくなっていくときなどに“ふつう”とのギャップが意識されます。維持改善を求めがちな息子は、母に厳しく接してしまいやすいそうです。

親の介護においては、楽観視したことにより対処が遅れて症状が深刻化したり、一生懸命ケアする人ほど厳しくなってしまい虐待につながったりするなど、無自覚に起こるトラブルが多いとのこと。今回お話くださった内容は、男性・女性の全員がそうだ、ということではありませんが、統計や調査等の客観的なデータに基づいた情報は、自分の「親の見方」にどんな傾向があるのかを確認するための参考になります。

  • 第三者(ケアマネなど)に相談することは家族内のコミュニケーションの助けになる。
  • 責任あるケアをするためには依存先を分割・分散させることが不可欠。
  • 自分のできることを具体的に考えるために日頃から親の希望を聞いておく。

など、自分が介護者になったときはもちろん、介護者を周りで支える立場になったときのためにも、介護の現状や起こりうる問題、心構え等について知っておくことが大事だと感じました。

周囲の助けを受け取るには、体制的サポートが整っていることが必要です。職場における支援制度が、支える人と支えられる人、みんなにとってより使いやすいものとなればと思います。

木材加工・特性研究領域 木材機械加工研究室 松村ゆかり:記

 

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