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更新日:2017年11月10日
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11月2日に国連大学 ウ・タント国際会議場で開催されたJIRCAS国際シンポジウム2017「国際農業・食料・栄養研究における女性研究者の活躍推進」に参加し、基調講演を拝聴したので報告します。最初にJIRCASの岩永理事長の挨拶では、農業分野での女性の社会進出を考える上で重要なことは、発展途上国の郊外地域で農業を営む女性の地位向上であり、JIRCASの技術開発のターゲットもまさにそこにあるという説明がありました。
最初の基調講演は、International Center for Biosaline AgricultureのIsmahane Elouafi博士から、「食料安全の将来のために、なぜより多くの女性研究者が必要なのか?」という講演でした。『1960年代からの「緑の革命」では、世界的な食糧不足を解決するために研究開発は有効であることが実証され、今後さらに急増する世界の人口から起こりうる食糧不足を回避するためにも研究開発は有効であると考えられる。それには、新たなる視点での研究開発が求められる。農業における労働力の40%以上を女性が占めるにも関わらず、政策決定や投資の場面でその視点が活かされないことは不利益であり、特に気候変動の影響で食料の安全が脅かされるような地域では、農業分野の研究開発に携わる女性を増やすことが重要である。』という趣旨でした。
2番目の基調講演は、Harvest PlusのHowarth Bouis博士による、品種改良で作物のビタミンやミネラルの含有量を増やし(Biofortification)、人々の死亡率を下げる取組についての話でした。『「緑の革命」後、穀物の生産量は増加したが、価格は上昇傾向にある。豆類の生産量はそれほど増加しておらず、加えて、ビタミンやミネラルの価格は上昇している。こういった状況の中で発展途上国では、収入の大半を主食となる穀物の購入に当てるため、人々のビタミンやミネラル欠乏による健康阻害の頻度は高くなる。』ということです。『その対応として栄養強化作物の品種改良を官民挙げて国際的に取り組んでいる。』ということでした。
最後の基調講演は、お茶の水女子大学の須藤紀子准教授による、生まれてくる子供の健康と発達のための女性の栄養摂取の重要性に関する講演で、子供の出生時の栄養状態が貧困の連鎖に大きく関与しているという、私的には最もショッキングな内容でした。『妊娠初期から新生児が2才に達するまでの1000日間での栄養摂取と成長はその子の一生を大きく左右する。生まれた時の体重が2500グラム以下で、さらに2才までにある程度まで追いつかないと、その子供も低体重児を出産する可能性が高くなり、さらにそれだけでなく、様々な能力が備わらず、教育レベルが低くなり、肉体的にも発達せず、そのため収入も低くなってしまう。』ということです。また、『発展途上地域では、一家の食事メニューは男性が決め、実際の調理は女性行うことが多い。新生児の栄養状態を調査するためには家庭における食事を調査する必要があり、炊事場で実際に調理している女性から直接聞き取りする調査をする際には女性研究者であることでスムースなコミュニケーションが取れる。』ということでした。
普段の生活ではあまり意識していませんでしたが、発展途上国において農業は生活と直結し、農業は人間の食料や栄養の源であり、そこに女性が関わることの重要性を実感できました。
ダイバーシティ推進室長 安部 久:記
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開会の挨拶をする岩永理事長 |
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