ダイバーシティ推進室 > シンポジウム・セミナー参加報告 > 第3回EAJジェンダーシンポジウム参加報告
更新日:2020年2月7日
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日本工学アカデミージェンダー委員会主催の第3回シンポジウムに参加しました。
日本工学アカデミーは、工学・科学技術全般の発展に寄与する目的で設立された産官学の技術者団体です。本シンポジウムでは、イノベーション創出につながる多様性の活性化について議論し、ジェンダーを通して新しい工学のあり方を探るというものです。シンポウジムの詳細は後日、EAJ-Newsにて紹介されますので参照ください。
シンポジウムには、若手から超ベテランの技術者・研究者まで、約100名弱の参加がありました。小職は技術者ではありませんが、ダイバーシティ推進室からの紹介があり、参加することにしました。
シンポジウムでは冒頭、阿部博之会長(東北大学名誉教授)の開会挨拶として「岡部金治郎博士(分割陽極マグネトロンの開発者)の開発は学生と実験している時にアイデアをつかんだ。とらわれない発想から新たな発明・イノベーションが生まれる。そして、とらわれない発想という意味では女性の方が向いているのではないだろうか。そのためには女性が活躍できる環境の整備が重要であろう」との話がありました。
東京大学の松本則夫副学長の歓迎挨拶のあと、シンポジウムの最初の登壇者は、丸山美帆子さん(大阪大学工学研究科、日本学術振興会特別研究員[RPD])。理学部地学科出身で結晶成長を専門にしている研究者です。隕石についての研究手法を(腎臓、膀胱、尿管などの)結石の治療や予防に役立てようとしています。丸山さんは、大学での研究、3人の子供の出産・育児、退職、研究の再スタート(再就職)を経て、さまざまな制度の壁や研究者としてのキャリア維持の仕方に悩みつつ、「わたしはこうして元気になった」ステップにたどり着き、現在の生活・研究スタイルを確立したとのことでした。
「わたしはこうして元気になった」ステップは、➀思い通りにならない時もあるが、その時できる最大限をする、(2)人とのつながりを大事にする、(3)人生は短いので本当にやりたいことを見つける、(4)新しいこと・新しい世界に挑戦する、(5)似ているもの・似ていることを探す、(6)共に楽しめる仲間を増やす、(7)(今はなくても悲観的にならず、きっと)あるかもしれないと思う柔軟さを持つというのもので、彼女自身、大変チャレンジ心が旺盛な方のようでした。
他に丸山さんが推薦したものには、「逆算手帳」(「やらなくてはいけないこと」ではなく「やりたいこと」を書く手帳)と「こころの筋トレ」がありました。
2番目は根岸和政さん(大阪大学大学院工学研究科付属オープンイノベーション教育研究センターイノベーション推進部門長)。サンフランシスコ州立大学の田中万里子名誉教授から心理学的アプローチPOMR(Process Oriented Memory Resolution)を学び、児童福祉、精神保健医療に従事してきた方です。
3番目は中根弓佳さん(サイボウズ(株)執行役員、人事本部長兼法務統制本部長)。
サイボウズ社は他のITベンチャー企業の創業時と同じくハードな働き方が常態化していたこともあり、2005年には離職率が28%にも達したブラック企業でしたが、その後社長の強い決意のもと、「短時間勤務制度」や「社員の複業を認める、複業をフリーにする制度」の導入などで、離職率5%の会社に変身させました。
そのポイントは、「社員全員が理想に共感すること」、「一人ひとりがものを言える多様性を持つこと」、「自分で選択し決定できる選択肢を増やす」ことで、「100人いれば100通りの働き方」を可能にする、目指すことが大事とのことです。
4番目は森重丈二さん((株)リクルートキャリア、コンサルタント)。同社で30年にわたる採用支援と転職支援の両業務を経験し、のべ3,300社を訪問、5,000人と面談し、約1,200人の転職を支援したそうです。
転職マーケットから感じるのは、これまでの延長線上ではなく、イノベーションを生む人材が今求められているということです。そして、時代・背景・技術が変化しているので、求められているスキルは「テクニカルスキル×ポータブルスキル」(ポータブルスキルは、どこでも通用する対人力・対自分力・対課題力)です。そのために絶対に必要な条件は"Will"~自分がどうありたいか~、どのように成長したいか、どのように働きたいたが明確になっていることだそうです。
登壇者の最後は、鈴木寛さん(東京大学公共政策大学院教授・慶応大学総合政策学部(SFC)教授、通産省出身、元参議院議員、元文科副大臣)です。今までの登壇者とは切り口が異なり、文明論的にイノベーションのあり方を読み解いています。
コーヒーブレークの後、本シンポジウムの締めとしてのパネルディスカッションでは、上記5人の登壇者に辻佳子さん(東京大学大学院化学システム工学教授)森勇介さん(大阪大学大学院電子工学教授)が加わりました。
結晶技術の電子工学者として著名な森教授は、サンフランシスコ州立大学の田中万里子名誉教授のメンタルトレーニング法により、「自分がプレッシャーに弱く自信を持てないのは幼い頃のトラウマが原因である」ことに気づいたそうです。そのトラウマが解消することで自信が生まれ、新たなベンチャー企業の創出につながったとのことです。またトラウマを解消し「こころの筋トレ」を勧めているとのことでした。
シンポジウムのテーマ「イノベーションと心理の相関から読み解く画期的発想への新たな道」は、完全にはつかみきれたとは言えませんが、多方面からの議論と切り口を聞いていますと、今は時代の変革点にあり、従来の考え方では対応しきれなくなっているとの共通認識が各登壇者にあるように思えました。
また、画一的にしばることなく、柔軟さ・曖昧さ・余裕を残すことも必要ではないかと思いました。その中から新しい発想やイノベーションが生まれてくるのではないか、そして工学系においても(もちろん、林学系や文系でも同じと思いますが)メンタルヘルスに関する教育、メンタルトレーニング、カウンセリングなどの手法がイノベーションのためにも必要かと思いました。
井田 裕之 理事 (法令遵守担当) ・ダイバーシティ推進委員会:記
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