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更新日:2020年12月17日

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イノベーションを支える多様な人材の活躍に向けて
~次期科学技術・イノベーション基本計画の共創に向けた全国キャラバン(つくば開催)~参加報告

  • 日時:2020年12月2日(水曜日)13時30分~15時00分
  • 場所:オンライン開催
  • 共催:つくば女性研究者支援協議会、つくば市、内閣府
  • 運営協力:公益財団法人未来工学研究所
  • 参加者:ダイバーシティ推進室メンバー 伊ケ﨑 知弘、小長谷 啓介

caravanPoster
(PDF:298KB)

つくば女性研究者支援協議会、つくば市、内閣府共催のオンラインセミナーに森林総研ダイバーシティ推進室の2名(伊ケ﨑室長、小長谷)が参加しました。2021年度から5年間を対象とする第6期科学技術・イノベーション基本計画の検討を進めるにあたって、科学技術・イノベーションに関わる多様なステークホルダーの理解を深めながら、次期基本計画を共創する機会として、全国キャラバンが実施されています。今回のセミナーでは、つくば市近郊の企業、大学、研究所で働く研究者を対象に、女性研究者の人材育成や研究環境に関する課題と解決方法についてグループワークが行われ、内閣府およびつくば市と意見交換を行いました。

つくば市の近況(つくば市政策イノベーション部 森祐介氏)

 つくば市の人口約24万5千人のうち、研究従事者は約2万人で、その21.1%が女性です。これは、全国平均の16.6%を大きく上回ります。つくば市では科学技術振興指針を作成し、女性研究者の活躍支援を明記しています。取り組みとしては、中高生対象のリケジョ(理系女子)育成プログラムの実施、「常陽リビング」で研究者を題材とした記事の掲載、支援協議会との意見交換などが挙げられます。市役所ではワークライフバランス推進プランを策定し、女性の活躍推進に努めています。具体的には、管理職登用にむけたセミナーの実施、企業との連携、採用拡大に向けた積極的な周知活動が挙げられます。子育て環境については、近年、つくば市に転入する子育て世代が増え、保育所への申込数が増加しています。それを受けて、昨年は県内最多となる618人分の席数を拡充したことにより、待機児童数を昨年度4月時点の131人から今年度4月時点には42人まで改善しました。今後も保育所やこども園の開設を進め、待機児童数ゼロを目指して、子育て環境を改善します。。

次期基本計画の話題提供(東北大学理事・副学長(研究)/ 総合科学技術・イノベーション会議議員 小谷元子)

 科学技術・イノベーション基本計画では、第5期にSociety5.0「超スマート社会」の実現を掲げ、破壊的イノベーションを考えるにあたって多様性やインクルーシブが大切としています。全国キャラバンで様々な人の意見を取り入れながら、計画の変革期と新型コロナによる転換期においては、これまでの価値観・社会のしくみを根本的に考え直したり、リデザインしたりすることが大きなテーマと考えています。Society5.0のコンセプトを提案したので、その具体化、つまり国民の安全や安心、そして幸福になれる人間中心の社会を実現する目的でデジタルトランスフォーメーションを進めていくことが重要と考えています。計画策定のスケジュールとしては、8月に科学技術・イノベーション基本計画の方向性の検討案を提示し、12月中に素案策定、パブリックコメント、答申、閣議決定という流れになります。
研究力やイノベーションと多様性の間には強い相関があると報告されています。そのため、多様性を高めることは、これからの社会の在り方を考える上で大きな力となります。女性研究者をめぐる状況については、大学では女性教員が増えてきていますが、企業ではまだ低い状況にあります。また、職階別(学長~大学院博士課程)に見ると、女性の割合は全体的に微増し続けていますが、大学院博士課程はほぼ横ばいの状況であり、改善が重要と認識しています。その方策として、女子中高生や保護者等に研究者の魅力を伝えていくことや、現職の女性研究者が幸せそうに生きがいをもって仕事をしている姿を見せることが大事ですが、それに加えて何に取り組んでいけば良いのかを一緒に考えていく必要があります。一方、職階が上がると企業の方が女性の研究者の比率が高くなります。そのため、単に女性を増やすのではなく、リーダーシップをとれる女性の人材を増やすというのも大事な視点です。その他に、研究環境の向上や、若手研究者のキャリア開始時期と重なるライフイベントへの配慮も重要です。

グループワーク(1)「人材育成の課題」:主な意見とコメント

  • そもそも全体の学生が少なく、全体の研究者の母数も小さいため、女性研究者が少ない。
    … 女子学生の保護者が、理系や博士課程に進むことに理解を示さない例が見受けられます。その辺りの意識を変えていく取り組みが必要です。また、企業などは修士卒を採用する傾向があるため、博士を修了しても就職で有利にならないことや、就職の不確実性が高い博士課程に進みたがらないという、キャリアパスに対する考え方も影響していると思います。
  • 管理職になりたくない。
    … ロールモデルが少ないことが問題です。動機付けやスキルアップの機会をサポートしていく必要があります。また、研究者のキャリアと女性としてのライフイベントが重なり、キャリア構築が中断してしまうケースも少なくないので、この辺りの積極的なサポートが重要と思います。男女問わず管理職はやりたくないという声が聞かれますが、職場環境やサポート体制を整えた上で女性を登用して、新たにモデルを作りだしていくことも重要かもしれません。
  • 古い体制、職場の風土が、若手の育成を妨げている。
    … 年齢順、男女の役割分担、軍隊のような規律など、古い感覚・体制が職場に残っていることがあり、それに女性は馴染まない部分があります。その辺りの意識改革が必要かもしれません。

グループワーク(2)「研究環境の向上に向けた課題」概要

  • 事務作業の簡素化・効率化により、研究に使える時間を確保する
    … 書類のデジタル化・手続きのオンライン化などを通して、これまで判子やFAX等で進めてきた事務作業を効率化するとともに、部署間での情報の共有や制度の統一など、システムの中身も変えていく必要があります。
  • アンコンシャスバイアスを改善して欲しい
    … 例えば子供が病気になった場合、連絡が来るのはいつも母親というケースが見られます。これに対して、地域によっては、緊急の連絡先として父親・母親の優先順位を申請する制度を取り入れています。
  • ライフイベントで研究を中断する場合に参考となること
    … 女性研究者のキャリアパス・ロールモデルの明示、選択的夫婦別氏制度の導入、住宅環境・交通網など通勤環境の改善に関する要望などが挙げられていました。

全体の感想

今回の議論の中で挙がってきた意見が国に届き、政策等に反映されることを期待しています。
私としては特に、科学技術を駆使して、デジタル化の実装や人材育成・サポートに力を入れて欲しいと思います。

sanka 

 きのこ・森林植生研究領域 (ダイバーシティ推進室併任) 小長谷 啓介 : 記

 

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