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更新日:2021年3月17日
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このセミナーはTV会議にして支所等に中継し、オープンセミナーとして、外部関係機関職員(産総研、農研機構、農環研)の参加もありました。
2013年4月23日に、Dr. Tuula Jyskeによる、”Women and Men Power –About gender equality issued and career system of young scientists in Finland-”と題する講演会を開催しました。Dr. Tuula Jyskeは、Finland Forest Research Institute (METLA、フィンランド森林研究所)に所属する、若手研究者です。2013年3月から5月にかけてご家族と一緒に来日され、森林総合研究所本所の組織材質研究室において、研究活動を行っていらっしゃいました。そこで、この滞在中に、男女共同参画社会を早期に構築したフィンランドのご出身であり、研究と小さなお子さんの子育てを両立されているDr. Tuula Jyskeに、フィンランドの男女共同参画社会と若手研究者のキャリア形成について講演していただきました。
フィンランドはおよそ日本と同じ国土面積を有し、国民一人あたりのGDPも同じである。フィンランドにおいて男女共同参画社会が早期に実現した要因として、Minna Canth(1844-1879)の存在がある。作家であり、平等教育の先駆者であるMinna Canthの誕生日は、2007年から祝日となっている。男女普通選挙が1906年に世界で初めて実施され、翌年には女性の国会議員が誕生しているものの、賃金の格差は依然として存在し、男性のほうが高い。子育てにおける性の意識は薄れ、子育てに男女が共同して参加できるような制度改革も進んでいる。
フィンランドは日本と異なり、高等教育を受ける比率は女性のほうが高く、そのためか、専門職や技術職に就く女性の数は男性の数を上回る。また、経済や政治への女性の進出が非常に進んでいて、政治では女性の大臣が圧倒的に多い。
フィンランドにおける男女共同参画の取り組みは、差別をなくすだけではなく、平等を推進することである。そのために様々な決まりが設けられている。男性、女性の性を問わず、公的な機関では、原則的に一方の性が40%以下にならないように決められている。IMFによれば、寛大な育休制度や家族手当が経済の拡大を生むとしている。フィンランドの社会保障システムでは、出産や育児に関しての補助金や手当の他、保育所に入る権利なども認められている。科学研究の分野においても、フィンランド・アカデミーは男女共同参画の推進を規定している。フィンランドにおける女性研究者の競争的資金の獲得率は、EUでトップである。
フィンランドでは、専門的キャリア形成の推進を行い、初期段階の研究者、ポスドク、リサーチフェロー・チームリーダー、教授・研究指導者の4段階の研究キャリアシステムを導入している。また、キャリア形成段階での国際ネットワーク形成のサポートも行っている。しかしながら、ほとんどの研究者が短期間の契約や外部研究者であり、研究での男女平等は進んでいるが、若手のキャリアアップは非常に難しい。フィンランド森林研究所においても男女共同参画プログラムがあり、採用、賃金、ワークライフバランスといった項目を扱っている。管理者と被雇用者が次年度の目標と当年度の業績について毎年話し合い、給料は、必要のレベル、競争、達成度の査定を基準に決定する。
若手研究者がキャリアアップのために体験する競争の厳しさ。男女共同参画プログラムや、出産や育児に関する社会保障システムの充実が、この競争に参加する女性研究者の支えとなっていることは明白です。しかし、フィンランドの男女共同参画にも厳しい現実があります。フィンランドにおいて男女普通選挙が世界に先駆けて行われた年が、1906年。それから100年が経過した現在でも、賃金の格差は依然として存在し、男性のほうが高いのです。ガラスの天井を完全に消滅させ、文字通りの男女平等に至るには、時間と努力がまだまだ必要のようです。では、日本は何年かかるのでしょうか?
男女共同参画室 菱川 裕香子: 記
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