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更新日:2024年4月2日

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日本森林学会ダイバーシティ推進委員会企画「若手雇用問題についての情報交換」開催報告

  • 日時:2024年3月8日(金曜日)12時~13時30分
  • 場所:東京農業大学 世田谷キャンパス 
  • 主催:日本森林学会ダイバーシティ推進委員会
  • 後援:男女共同参画学協会連絡会

 20240308日本森林学会ポスター(クリックで拡大)
若手雇用問題についての情報交換会ポスター(PNG:212KB)

 内容

- 特別講演 -

「若手・氷河期世代研究者の待遇改善が研究力強化につながる―科学技術系研究者の雇用に関する調査結果から―」志牟田美佐氏(東京慈恵会医科大学)

- 話題提供 -

「11年間に6つの研究室のポスドクをして考えたこと」長谷川陽一氏(森林総合研究所)

「近年の大学における教員採用の傾向と問題」山本 信次(岩手大学)

「研究職をめざす皆さんへ-森林総合研究所の採用について-」坪山良夫氏(森林研究・整備機構)

「ライフイベントとキャリア形成の間で考えたこと」 木村恵氏(秋田県立大学)

- パネルディスカッション -

「ポスドク問題を解決するために必要なこと(制度と個人で)」

開催報告

第135回日本森林学会大会会期中の3月8日(金曜日)12時-13時30分に、日本森林学会ダイバーシティ推進員会の企画として「若手雇用問題についての情報交換」を開催しました。日本森林学会ではダイバーシティ推進活動の一環として、大会期間中に男女共同参画に関するシンポジウムや交流会などを開催していますが、若手雇用問題については2010年を最後にテーマとして取り上げてきませんでした。また、男女共同参画学協会連絡会が2021年に第5回科学技術系専門職の男女共同参画実態調査(第5回大規模アンケート)、2022年に雇用問題アンケートを実施しました。その解析結果から、就職氷河期世代(1970年から1984年生まれの人)が年齢制限などで多くの支援から外れ、現在も困難な状況におかれていることが明らかになりました。一方、若手研究者にはJST創発的研究支援事業などの支援が始まっています。そこで、現在の若手やポスドクの雇用状況を情報共有する場、自由に意見交換できる場を設けたいと考えこの会を企画しました。

まず、若手・ポスドク雇用問題に詳しく、男女共同参画学協会連絡会の提言・要望WGで活動されている志牟田美佐先生(東京慈恵会医科大学)にご講演いただきました。次に、ポスドク経験者と採用側から二人ずつ話題提供をしていただきました。森林総合研究所からもポスドク経験者として長谷川陽一氏(樹木分子遺伝研究領域、日本森林学会ダイバーシティ推進担当主事)、採用側として坪山良夫氏(研究担当理事)に話題提供していただきました。その後、「ポスドク問題を解決するために必要なこと(制度と個人で)」をテーマにパネルディスカッションを行いました。

若手・氷河期世代研究者の待遇改善が研究力強化につながる-科学技術系研究者の雇用に関する調査結果から-

志牟田先生からは、ポスドクが不安定な雇用にあり、雇止めにあっている者が多くいること、数年ごとに移動をともなうため移住コストが高いにもかかわらず低収入であること、社会保障がされていないこと、研究の傍ら常に応募書類を作成しなくてはならない上、研究費も獲得しなくてはならないこと、充実したライフイベントを行うことができないことが、アンケートの回答結果とともに示されました。そして、それらが我が国の少子化や研究力の低下に繋がっていると推測されました。

11年間に6つの研究室のポスドクをして考えたこと

長谷川氏からは、自身の経験として、ポスドク時の任期が長くて4年2ヶ月、短くて10ヶ月、平均で2年であり、次の仕事が決まるか常に不安があったこと、雇われる財源によって求められる仕事も異なり、時間的にも資金的にも自分の研究をする余裕があまりなかったことが話されました。そして、学会という場は、仕事を探している人と、人を探している人が直接会って話ができる場であり、互いにアピールして有効に活用できると良いと語られました。

ライフイベントとキャリア形成の間で考えたこと

木村氏からは、ポスドクという立場で結婚と出産をした経験をもとに、職場に先例がない中で、ポスドクが利用可能な制度の情報を得るためには、学会や職場のダイバーシティ推進室のような組織が情報共有やサポートを行っていくことが重要であると語られました。また、制度を「使っても良い」ではなく、積極的に使って皆でプロジェクトを進めようという職場環境や理解があると良く、自身は周囲の理解があったが、それを「幸運だった」で終わらせず後進に繋げていきたいと語られました。

研究職をめざす皆さんへ-森林総合研究所の採用について-

坪山氏からは、森林総合研究所における研究職員の採用形態(定年制の研究職員やテニュア型任期付研究職員など)や公募情報の示し方(配属先の領域、研究課題名、研究内容および応募条件)、過去十数年の公募数と採用人数の推移などが示されました。そして、公募しても応募がない、あるいは応募があっても条件が合わず採用に至らないなどの採用における課題があること、多様性の確保として、採用はもとより公募情報を日本語と英語の併記にしていること、年齢制限を設けていないことが語られました。

近年の大学における教員採用の傾向と問題

山本先生からは、林学や森林科学自体がどうあるべきか考える必要もあるかもしれないが、その大学が業績数を求める研究メインなのか、技術者養成メインなのかを見極めることが重要であると語られていました。教員採用に関しては、大学は教育をする場であるということが大事なポイントであるため、実習など組織としての仕事の運営もできる人が求められること、若手は学会に参加して自分を売り込むことが重要であると語られていました。

パネルディスカッション:ポスドク問題を解決するために必要なこと(制度と個人で)

パネルディスカッションでは、「ポスドク問題を解決するために必要なこと(制度と個人で)」をテーマに話し合いました。内閣府や文部科学省に提言要望を行っている志牟田先生からは、今の若手研究者への制度は充実してきていることから、10年後は今と違った状況にあるよう、若い人たちで切り開いていって欲しいこと、国や文部科学省はいろいろと変更してくれるので(科研費において出産期間や育児期間を考慮する、コロナ禍で任期を延長するなど)、やはり声を上げていくことが必要であり、1人で悩まないことが重要であるということが話されました。

森林防災研究領域 久保田多余子:記
(日本森林学会ダイバーシティ推進担当理事)

 

 

 

 

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