ダイバーシティ推進室 > 国立研究開発法人森林研究・整備機構の取組み > こんな活動をしています > TIDEシンポジウム参加報告
更新日:2019年10月15日
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今回は10月4日の筑波会議の中で開催された”TIDE(筑波大、IBM、産総研によるダイバーシティ推進のためのコンソーシアム)シンポジウム”に参加しました。男女共同参画社会が進むとどういった社会になるのかという意味でとても刺激的で興味深いシンポジウムになりました。
筑波大の五十嵐DACセンター長の開会挨拶の後で、Nyhamar氏によるノルウェーの男女共同参画の状況についての紹介がありました。なんと、ノルウェーでも50年前の1969 年には9割の母親は家で主婦をしていたとのことですが、現在では9割が仕事を持っているそうです。この50年の間に かの国で何が起こったのでしょうか。
ノルウェーでは1970年代に社会への女性参加が急速に進んだそうです。すでに、1988年の段階で18人中8人が女性の大臣だったとのこと。現在では国会議員も169名中69名が、閣僚は22名中の10名が女性だそうです。また、民間会社(上場企業)の役員の40%を女性にするという法律が2004年に施行され、さらに公共セクタで積極的に女性を登用したこともあって、現在ではトップマネージメントの25%が女性であり、女性の就業率の底上げにも繋がったということでした。
その他に、女性の政治参画率(国際比較で世界第14位:日本は165位)も高く、中央・地方の立法府に女性が多いことから、暮らしに重点を置いた法および社会システムの整備が行われやすい環境にあるようです。つまり、女性の働きやすい社会環境を整えるためには、当事者によってその環境整備がなされるのが合理的であるという考え方ですね。そしてその達成のためにはある程度の数の力が必要であるということで、当初はクオーター制(規則等により議員、役職者、管理職等の一定割合を女性とすることを定めるもの)を導入したようですが、現在では考え方、数の上でも男女共同参画が定着したこともあり、必ずしもクオーター制の必要性は高くないようです。
一方で、これだけ女性の社会参画が増えると、家事に男性が耐え切れなくなったり、女性の経済的な自立が可能になることから、離婚率もとんでもなく高いのでは?という気もします。実際のところ、ノルウェーでは一時、離婚率が高まったようなのですが、とある国際比較によると、現在は落ち着いてきている(同第31位)ようです。なんと現在、第39位の日本とランキングもその根拠となる数値的にもほとんど差がないという状況です(一位は断トツにロシアなのですが、日本も以外と高くて驚きます)。また、理由については教えてもらえませんでしたが、女性の権利拡大や社会進出について、ノルウェーの男性側からはあまり不満が出てきていないとのことでした。
さて、これほど高い水準で男女共同参画が進んだ社会とは、どのようなものかについてもお話がありました。ノルウェーの状況についてランキング形式で紹介すると、
素晴らしい感じですね。これを日本と比較すると、労働時間が短いのに一人当たりのGPDが高い、すなわちかなり生産性の高い社会であって、なおかつ労働時間も短いことから、ワーク・ライフバランスもしっかり取れる社会になっているようです。平日でも夕方から家族と過ごす時間が取れる。したがって、(税金が高かったり色々あっても)幸福度が高くなるということのようでした。
一方で、これだけ女性の社会進出が進むと、これまでの社会では考えられなかったことが起きるようです。たとえば以下のような問題です。
まさかの展開ですね。でも、日本の女子学生の進学状況、家庭での役割の多様化を考えると、近い将来、私たちの社会もこういった状況になるかも知れません。
ところで、このようなノルウェーにおける高い水準での男女共同参画はどのように達成されたのでしょうか。
Nyhamar氏によると、大きくはその理由は二つあるとのことでした。ひとつは、社会の雰囲気です。ノルウェーでは以前から女性の権利を求める強い社会的な動きかけがあり、早くから男女共同参画の雰囲気があったこと、もうひとつは、1978 年に制定された男女平等法です。この法律は男女平等オンブットという機関により守られていて、教育・雇用・文化面など、生活全般にわたり性による差別を取り除くことを目的として、男女平等の実現に向けた実質的な手段となっているとのことでした。この「社会的な雰囲気」と「法規制」二本が車の両輪となって、同国の男女共同参画社会の構築を牽引した結果とのことです。
では、私たちは何から取り組んでいけばよいのかということですが、国内においては、関連法制度は整いつつあり、施設環境についても徐々に整備が進んでいます。しかしやはり入れ物があってもそこに魂がないと何も進みません。このマインドの問題は大きく、組織運営・改革に力を発揮するはずの女性管理職や役員などの男女比などについては、男女共同参画社会の先進国からみると、あまり変わっていない状況に見えますねとのこと。
根本的な変化が生じるのは、これまでの男性・父権型社会にどっぷりとつかっていた世代から、(男女共同参画を含む)ダイバーシティ教育のなされた世代へのバトンタッチが行われてからになる(ノルウェーではこれをすでに達成しているため、おそらく男性からの文句もでないのだと思いました)ようですが、とりあえず、女性の働きやすい環境を作り、男性の育児・介護など家庭への参画を強化するのが、男女共同参画への第一歩だとのことでした。つまり、自分たち自身が学び、実際に行動してみることが肝要だとするメッセージだと受け取りました。
最後に、これもNyhamar氏がおしゃっていたのですが、ある調査によると、南アジアで男女共同参画が達成されるのは約70年後だそうです。東アジアの構成員としては、直接関係のない話のようにも聞こえますが、同じアジアの住人として他人事ではありません。Nyhamar氏によると、日本も本気で取り組まないと、実質的にはこれくらいかかってしまう可能性もありますよ、とのことでした。
人口(職員)が減少し、高齢化していく日本や私たちの職場ですが、現実は現実として受け入れつつ、いかに生産性を高め(時間を作り)、暮らしやすい社会や職場を作っていくのかが課題になっています。今回のセミナーは、そういったことを先進する国の取り組みや参加者相互の意見交換を通じて会場全体で考えるとてもよい機会になったのではないかと思います。
文責 ダイバーシティ推進室 室長 高山範理
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写真1:Inga M.W.Nyhamar氏 |
写真2:会場を巻き込んだ藤沢氏との対談 |
写真3:会場は大勢の参加者で熱気にあふれてました |
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