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更新日:2025年7月15日

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永久凍土林の地下部炭素フラックスに対する気候変動影響の予測:林床蘚類の寄与の検証

1.共同研究機関

アラスカ大学フェアバンクス校国際北極圏研究センター

2.研究期間

2025~2029年度 JSPS科研費

3.責任者

野口享太郎(立地環境研究領域)

4.研究の背景

永久凍土は凍結した土壌に莫大な量の炭素を蓄積していますが、温暖化を伴う気候変動により永久凍土が融解し、この炭素蓄積が損なわれる可能性が指摘されています。永久凍土林の地表面は蘚類に覆われていますが、これらの林床蘚類の生産量は樹木に匹敵し、永久凍土林の炭素吸収に対して大きく寄与しています。しかし、永久凍土環境の変化と林床蘚類の生産量の関係についてはよく分かっていません。そのため、気候変動の影響下にある永久凍土林の炭素収支について評価し、その将来を予測するには、永久凍土環境の変化が林床蘚類の生産量におよぼす影響について理解する必要があります。

5.研究の目的

本研究は、気候変動下における永久凍土林の炭素収支を評価し、それに対する林床蘚類の寄与を明らかにすることを目的としています。

6.研究内容

米国アラスカ州内陸部の永久凍土クロトウヒ(Picea mariana)林において、ミズゴケ(Sphagnum spp.)とフェザーモス類(Pleurozium schreberiなど)の生産量(炭素吸収)を定量的に評価するとともに、融解深度など凍土環境の差異との関係を解析します。そのほか、永久凍土クロトウヒ林の炭素動態に大きく影響する細根生産量(炭素吸収)や土壌呼吸速度(炭素放出)を明らかにします。これらの炭素吸収・放出に関わる結果を炭素動態モデルに組み込むことにより、気候変動下における永久凍土林の炭素収支の変化と、その中における林床蘚類の寄与について解析を進めます。本研究で得られる成果は、森林生態系による炭素吸収機能の将来予測に役立つことが期待されます。

約100年生の永久凍土クロトウヒ林の様子。高さ数十cmから数メートルのクロトウヒの疎林になっている。枝が短くマッチ棒のような樹形をしている。
図1:永久凍土クロトウヒ林(林齢約100年)。

蘚類に覆われた永久凍土クロトウヒ林の林床の様子。手前の赤っぽい部分はミズゴケ類、その周辺から奥にかけての黄色っぽい部分はタチハイゴケなどのフェザーモス類により覆われている。
図2:永久凍土クロトウヒ林の林床を覆う蘚類。