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更新日:2025年7月22日

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永久凍土の融解が樹幹メタン放出におよぼす影響の評価

1.共同研究機関

アラスカ大学フェアバンクス校国際北極圏研究センター

2.研究期間

2024~2027年度 JSPS科研費

3.責任者

野口 享太郎(立地環境研究領域)

4.研究の背景

永久凍土は凍結した土壌に莫大な量の炭素を蓄積しています。しかし、温暖化により永久凍土が融解すると、これらの炭素が二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)などの温室効果ガスとして放出される可能性があります。特にCH4は同じ量のCO2の約30倍の温室効果を持つため、永久凍土融解の影響が懸念されています。CH4は土壌中のCH4生成菌により作られて地表面から放出されるほか、樹木の根を介して幹の表面から放出されるプロセスもあります(樹幹CH4放出)。しかし、永久凍土林における樹幹CH4放出については知見がほとんど無いため、研究を進める必要があります。

5.研究の目的

本研究では、永久凍土林において樹幹CH4放出を定量的に評価するとともに、永久凍土融解が及ぼす影響について明らかにすることを目的としています。

6.研究内容

米国アラスカ州内陸部の永久凍土林において、クロトウヒ(Picea mariana)やカンバ(Betula spp.)などの樹木の幹から放出されるCH4の量を定量的に評価します。また、人為的な昇温処理や森林火災により地温が上昇して凍土面が下がった場所においても観測を行い、永久凍土融解が樹幹CH4放出量に及ぼす影響について明らかにします。永久凍土林は世界の北方林面積の20%以上を占めることが知られています。そのため、本研究で得られる成果は、全球レベルでの温室効果ガス放出量推定の高精度化や、その温暖化影響の予測に役立つことが期待されます。

アラスカ内陸部の森林景観。写真は北向き斜面から見た対岸の南向き斜面の様子。斜面中部から上部には永久凍土が無くカンバやポプラなどの落葉広葉樹が分布しているが、斜面下部から低湿地にかけては永久凍土があり、常緑のクロトウヒが分布しているのが分かる。
図1:アラスカ内陸部の森林景観。永久凍土の分布する北向き斜面と低湿地がクロトウヒ(Picea mariana)林になる。

写真は樹幹メタン放出計測(ガスサンプリング)の様子。クロトウヒの幹にガスを採取するためのチャンバーが設置されている。チャンバー内のCH4濃度の上昇速度から、樹幹CH4放出量を求める方法。
図2:樹幹メタン放出計測(ガスサンプリング)の様子。