森林総合研究所について > 国際連携 > 共同研究 > 生物多様性の保全を考慮した効率的な世界木材生産 ―国別生産量の生態経済学的最適化―
更新日:2020年11月30日
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オーストラリア国立大学(Australian National University)、オーストラリア
2017~2019年度 JSPS科研費 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)
山浦 悠一(四国支所)
日本は世界有数の森林率を誇りますが、過去数万年間にわたって草地が広域的に維持されてきたと指摘されています。林業活動は森林を伐採して木を植え、植栽した木と競合する雑草木を刈り取ります。そして、この一連の作業は草地に類似した開放的な環境を作り出し、そこには多くの草地性生物が生息することが明らかになってきました。国内の林業活動は、こうして国内の草地性生物の保全に役立つことが期待されます。一方で、国内林業の経済的な状況は厳しく、海外では木材輸出が基幹産業となっている国もあります。世界全体の福利向上のためには、各国の生物多様性を保全しながら、いかに効率的に木材生産を行なうべきか検討する必要があります。
本研究では、生物多様性の保全を考慮した効率的な木材生産を世界的視野に立って、経済的な側面から分析します。そして、生態学と経済学を統合することにより、世界の木材マーケット内での、日本を含めた各国林業や研究の今後のあるべき姿について議論したいと考えています。
各木材生産国の森林タイプや森林成長量、木材生産コストなどを収集・整理します。老齢林と幼齢林の減少を生物多様性の喪失ととらえ、両者の生態学的・経済的価値を評価します。
日本のスギ人工林林業の費用対効果は他国の主要な林業と比較して3-4 桁劣っているという結果が得られました。林業の経済性と生物多様性の保全に関しては、国内林業の経済活動以外の便益をどのようにとらえるかが大事だと考えられました。また、オーストラリアタスマニア州の保持林業を視察し、森林の生物多様性を広域的に評価するモデルを構築しました。そして国内の草地の歴史を遺伝的アプローチにより明らかにし、生物群集と環境の関係を明らかにする新たな手法を開発しました。
海外の事例を参考にしながら、生物多様性の広域評価モデルを使用して草地の歴史を理解することにより、国内林業の環境便益を向上させることが期待されます。
山浦悠一, 山中聡, 明石信廣. 2018. 研究から実践へ―タスマニアにおける保持林業―. 森林技術 918:26-29.
Yamaura, Y., A. Narita, Y. Kusumoto, J. Nagano Atsushi, A. Tezuka, T. Okamoto, H. Takahara, F. Nakamura, Y. Isagi, and D. Lindenmayer. 2019. Genomic reconstruction of 100 000-year grassland history in a forested country: population dynamics of specialist forbs. Biology Letters 15:20180577.
Yamaura, Y., D. Lindenmayer, Y. Yamada, H. Gong, T. Matsuura, Y. Mitsuda, and T. Masaki. 2019. A spatially-explicit empirical model for assessing conservation values of conifer plantations. Forest Ecology and Management 444:393-404.
Yamaura, Y., F. G. Blanchet, and M. Higa. 2019. Analyzing community structure subject to incomplete sampling: hierarchical community model vs canonical ordinations. Ecology 100:e02759.
Yamaura, Y., D. Lindenmayer, Y. Yamada, H. Gong, T. Matsuura, Y. Mitsuda, and T. Masaki. 2020. A spatially explicit empirical model of structural development processes in natural forests based on climate and topography. Conservation Biology 34:194-206.
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