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更新日:2023年8月24日

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パナマ産木材の樹木年輪同位体を用いた木材産地判別のための予備調査

1.共同研究機関

国際熱帯木材機関(ITTO)、パナマ環境省

2.研究期間

2023~2024年度 ITTO受託研究

3.責任者

香川 聡(木材加工・特性研究領域)

4.研究の背景

我が国では2023年に「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律の一部を改正する法律」が公布されましたが、木材が原産国で合法的に伐採されたものどうかを確かめるためには、木材の産地を判別する必要があります。日本やロシアなど、四季がはっきりしていて明瞭な年輪が形成される地域では、年輪の安定同位体比により木材の産地が判別できることがすでに分かっています(図1)。一方で、違法伐採は特に熱帯地域で深刻なので、熱帯産の木材の伐採年月・原産地を判別する技術の開発が望まれていました。

 

日本地図。北海道に推定産地の丸。

図1 帯広産ミズナラ材を産地未知材と仮定して、その酸素同位体比から産地を推定した例
図中の円の直径は、産地未知材と日本各地の木材との間で計算した、年輪の酸素同位体比時系列間の相関の大きさ(t値)を示している。帯広産のミズナラ材は、他の帯広産ミズナラ個体と最も酸素同位体比の変動が類似しているので、円の直径が最大になる地点として未知材の産地を推定することができ、実際の産地(x印)と推定産地が一致していることが分かる。

5.研究の目的

そこで本研究では、森林総合研究所が独自に開発した年輪の安定同位体比を用いた木材産地判別手法(Kagawa & Leavitt 2010)を、比較的四季がはっきりしておらず、不明瞭な年輪しか形成されないパナマ産樹種に適用し、パナマ産木材の生育年・原産地の判別が可能かどうかを明らかにします。ちなみに熱帯産の樹種でも、形成される木材の酸素同位体比には年周期が存在し、目に見えない同位体比の年輪が存在することが分かっています。

6.研究内容

パナマ国内の複数の地点において、違法伐採の対象となっている樹種のうち、まずは年輪が比較的明瞭で年代決定・産地判別が容易だと思われるチークを対象として成長錐コアを採取し(図2)、年輪の安定同位体比データベースを構築します。第一に、同一産地で採取した複数個体間で年輪の安定同位体比の変動が共通しているかどうかを調べ、年輪形成年代の決定を試みます。年輪形成年代の決定に成功した場合、第二のステップとして、パナマ国内の産地ごとに複数個体の年輪の安定同位体比を平均した時系列のデータベースを構築します。次に、ある産地既知の木材試料を産地未知のものと仮定し、その試料の年輪の安定同位体比時系列と、パナマ国内の各産地の平均的な年輪の同位体比時系列との相関係数を計算し、相関係数が最大になる地点として産地を推定し、これが正しい産地と一致するかどうかを確認します。熱帯材の生育年・原産地判別に成功した場合は、違法伐採対策技術としての応用が期待できます。

 

大木から、成長や年輪を推定するためのサンプルを取得する研究者

図2 パナマの調査地にてマホガニーの巨木から成長錐コアを採取している風景
森林総合研究所にて開発された成長錐コア自動採取装置(スマートボーラー)を用いてパナマの複数産地にてコア試料を採取した。

 

 

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