森林総合研究所について > 国際連携 > 共同研究 > 土壌水分供給能からみた極めて高い樹高を有する熱帯平地乾燥常緑林の成立条件
更新日:2024年6月6日
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カンボジア王国森林局(Forestry Administration, Cambodia)
2019~2023年度 JSPS科研費
大貫 靖浩(立地環境研究領域)
カンボジア中央部には、乾季にはほとんど雨の降らない熱帯モンスーン気候下にもかかわらず、非常に樹高の高い平地乾燥常緑林が広く分布しています。しかしながら、乾燥常緑林の樹木は水分環境の制約で高木に生長しにくいというのが通説であり、植物生理学的な研究だけではその成立条件が説明できません。
本研究では、カンボジアの平地乾燥常緑林が立地する非常に厚い土壌層に着目して、同気候下の他地域よりも樹高が高くなるメカニズムや、異常な寡雨などの極端気象下での平地乾燥常緑林の維持機構を、深さ9mの大型土壌断面での土壌水分実測と、降水量・蒸発散量・土壌層厚・土壌特性を組み込んだ、深層土壌水分移動シミュレーションを用いて解明します。
カンボジア王国コンポントム州に位置する、極めて高い樹高を有する平地乾燥常緑林を研究対象とし、降水量および降雨パターン、高さ60mの気象観測タワーで計測中の蒸発散量、深さ9mの大型土壌断面で毎日観測中の地下水位変動や、大型土壌断面内での根系分布・深さ20cmおきの土壌含水率の実測値を検証値として、土壌水分移動シミュレーションにより、長く厳しい乾季における樹木への潤沢な水供給メカニズムを解明します。また、近接する平地乾燥落葉林においても深さ4mの大型土壌断面を掘削し、地下水位観測と土壌含水率測定を実施して土壌水分移動シミュレーションを行い、平地乾燥常緑林と比較することで、平地乾燥常緑林の成立地帯に特有の土壌水分供給パターンを明らかにします。
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現地での各種観測・測定と、数値モデルによる土壌水分移動シミュレーションにより、極めて高い樹高を有する平地乾燥常緑林の成立メカニズムを、深層土壌層内の水分貯留の観点から明らかにしました。
本研究の現地観測データ、および土壌水分移動シミュレーションの成果は、近年森林の伐採圧が高まるメコン川下流域のカンボジアにおいて、森林の劣化, 減少, 回復等の様々なシナリオを想定した水資源の動態予測に貢献できます。
Yasuhiro OHNUKI, Jumpei TORIYAMA, Eriko ITO, Shin’ichi IIDA, Naoki KABEYA, Sophal CHANN, Samkol KETH (2022) Fluctuation of Soil Water Content in the Tropical Seasonal Forests of Cambodia Focusing on Soil Types and Properties. JARQ, 56 (2), 177-187.
鳥山淳平・大貫靖浩・壁谷直記・清水晃・清水貴範・飯田真一・玉井幸治・KETH Samkol・CHANN Sophal(2024)モンスーン熱帯のスーパーエルニーニョ年における低地常緑林の土壌水分動態 —数値モデルによる解析—. 九州森林研究, 77, 195-198.
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