前生稚樹密度の密度は何によって決まるか?
近年,林業の低迷等による手入れ不足林の増加や森林に対するニーズの多様化等を背景として,針葉樹人工林を針広混交林や広葉樹林へと誘導する新たな施業技術の開発が期待されています。過去の研究から,暖温帯において天然力を活用した広葉樹林化を図る場合,前生稚樹として更新材料が伐採前から確保されている場合は,より確実性が高いことがわかっています。
そこで,本研究では,人工林の下層植生(前生稚樹)の調査を多点で行い,前生稚樹の組成や量について調べています。また,あわせて環境条件を測定することで,広葉樹の組成や量に影響を与える要因の抽出を試みています。現在,まだ調査を継続中ですが,これまでの調査により前生稚樹には被食散布型(鳥などに食べられて種子が散布される)の樹種の割合が非常に多く,暖温帯における広葉樹林の主な林冠構成種で重力散布型(主にドングリ類)であるシイ・カシ類は少ないことがわかりました。また,前生稚樹の量(密度)に影響を及ぼす要因として,林齢・標高・光環境・間伐後の年数・植栽樹種・地形・シカの有無などがあげられることがわかりました。
これまでは,主に人工林率が高く周辺に種子源となる広葉樹林が少ない地域で調査を行ってきました。今後は,周辺に広葉樹林がある地域で同様の調査を行うことで,種子源としての広葉樹林の役割を明らかにしていく予定です。

写真1 前生稚樹が豊富にある人工林

写真2 前生稚樹がほとんどない人工林
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