広葉樹林化のための更新予測および誘導技術の開発

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人工林は広葉樹林から近いところほど種多様性の高い森になる?

 人工林を広葉樹が混ざった林に誘導するためには、自然に侵入・生育した広葉樹を育成することが簡便で、経済的な方法です。しかし、人工林内には種子を散布するような大きな広葉樹がほとんどありません。したがって、人工林に供給される種子量は周辺広葉樹林からの距離に大きく影響されると考えられます。そこで、私たちは広葉樹林に隣接するスギ人工林で、両者の境界からスギ林内部への距離に伴って、散布される種子量や種類はどう変化するのか,さらには発芽しないで土中に眠っている埋土種子や実生、稚樹の数や種類もまた広葉樹林からの距離に関係しているのかを調べてみました。
 無間伐林分では、散布種子・埋土種子・実生・稚樹いずれも広葉樹との境界付近で数量・種数とも最大で広葉樹林から離れるほど低下しました。これは、広葉樹林に近いほど、多くの種子が散布され、また春先明るく温度も高いので種子発芽が促され、実生も大きく育ったためだと考えられます。これは、間伐遅れの大面積人工林では、境界部分以外の広い面積で著しい種多様性の低下を招いている実体があることを示しています。
 しかし、間伐をしたスギ林で調べたところ無間伐林分のような距離依存性は見られず,広葉樹林から離れても多くの広葉樹実生・稚樹が見られました。これは、明るくなりどこでも種子が発芽し,実生の成長も促進されたためだと考えられます。これは間伐が人工林の種多様性を高めるために有効であることを示しています。