研究紹介 > 刊行物 > 研究成果選集 > 平成6年度 研究成果選集 1994 > GISを利用した地域資源の推移と供給予測システム(支援システム)の開発
更新日:2012年7月11日
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問題名:森林の総合的利用計画方式と持続的林業経営管理方式の確立
担当:林業経営部資源解析研究室 斎藤和彦
北海道支所天然林管理研究室 白石則彦
林業経営部資源計画科 高橋文敏
地域の森林資源を適切に管理し,有効に利用していくために森林計画が樹立されている。現在の森林計画の問題点は,林業経営の停滞によって計画と実行が大きく乖離してしまっていることである。実態に沿った計画を策定するためには,生産活動に影響する林道からの距離階,傾斜区分などの情報や生育条件に影響する土壌,斜面方位などの情報を付加させ,より細かい資源推移と供給予測を行うことが考えられる。ここでは,そうした情報を付加させる手段としてGISを利用し,林道からの距離階と傾斜区分を考慮した資源量の推定等を試みた。
対象地として神奈川県南足柄市及び山北町を選定し,GISデータは神奈川県から提供していただいた神奈川県林政情報システムの地図データとその属性データを用いた。
より細かい資源推移と供給予測を行う試みとして,GISの基本的な機能を用いて(1)林道からの距離階区分図と(2)国土数値情報から生成した傾斜区分図を作成し,(3)それらを森林基本図に重ね合わせて(図1)各林小班データに付加した。林道からの距離や林地の傾斜区分は林業活動上,重要かつ基本的な情報となるが,現在の森林計画では,非常に粗い距離データしか入力されていない場合が多いなど,そうした情報が有効に利用される形になっていない。今回,GISを用いることによりそうした情報が容易に付加できることが確認された。これによって林道からの距離階と傾斜区分別の資源量の推定を行うことが可能となる。(図2)
また,蓄積推定精度を高めるために人工林については地位区分,天然林については環境庁発行の植生図との重ね合わせも行ってみたが,神奈川県の林相図特有の問題もあり植生図との重ね合わせではかなりずれを生じた。今後,地図情報の統ーが望まれる。
現在の森林計画は,現実との適合性で多くの問題を抱えているが,より適切な森林管理を実現する支援システムとして,GISの導入は非常に有効であり,また,現在ある情報を整備・統合する契機としても重要な意味を持つものと思われる。
国有林については経営合理化と環境面を含めた多様な要請に応えていく必要性から,また,民有林については,いわゆる“生き字引”の引退によって施業履歴等の情報が失われる可能性などから,GISの導入は森林管理を支援する非常に有効な手段になってくると思われる。
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