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更新日:2012年7月11日

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トドマツ列状植栽人工林における間伐の効果

問題名:北方系森林の高度に自然力を活用した管理技術の確立

担当:北海道支所育林部 金運洋一
北海道支所造林研究室 大澤晃・九島宏道
生産技術部物質生産研究室 石塚森吉
企画調整部企画室 佐藤明

背景と目的

北海道の人工林には列状植栽がよく見られる。この列状植栽の人工林も他の地域と同じように拡大造林時代に植栽された林が多く,現在間伐の時期を迎えている。しかし,人工林の歴史が浅い北海道では間伐効果に関する知見,特に列状植栽地での間伐の影響評価についての知見の蓄積が少なかった。こうした背景のもとにこの課題では,トドマツの5条植え林分に列状間伐を含む種々の間伐を実施し,その効果を数年にわたって調査した。

成果

5条植え25年生トドマツ林に表lのように9とおりの間伐処理区を設定した後,伐倒調査を含めて調査を続け,間伐から8年後に最終調査を行った。間伐から数年後でも残存木の成長と間伐の種類・強度の聞に相聞が見られた。上層間伐区では,強い間伐ほど残存木中の大きな個体の成長がよくなった。全層・列状間伐区では無間伐区に比べて残存木中の小さな個体の成長が促された。一方,下層間伐区では間伐による残存木の成長促進効果はあまり期待できなかった。間伐から5年後に行った伐倒調査の結果を表2に示す。間伐の影響は残っていたが,弱度の間伐区では葉量がほぼ一定になった。またl本当たりの材積成長量は列状弱度,全層強度,上層弱度で大きかった。これはいずれの処理区も成長のよい大きな個体が残ったことによる。間伐後8年目に3条目だけを抜いた列状弱度区,2条と4条を抜いた列条強度区,無間伐区を対象に,8年前に測定した同一個体の胸高直径の測定を再び行った。間伐年と8年後の各処理の平均胸高直径を図1に示す。各処理ともに直径成長が見られたが,断面積で比較すると強度区での成長が大きかった。各処理,各条の8年間の断面積成長率を表3に示す。無関伐区と弱度区では,南西側の外縁条の成長率が最も高い。また,弱度区では南西側の1条を抜いた4条の成長もよかった。一方強度区ではすべての条でほかの処理区の成長率を上回っている。直径の上位10個体についても同じ傾向が見られた。また,両側を開放した個体の成長率をlとすると,片方のうち南西側を開放したものの成長率は0.88,北東側だけを開放したものは0.77となり,両側が閉鎖されたものは0.8で,北東側を開放したものとあまり差が見られなかった。

表1 無間伐処理様式
無間伐区:除間伐を行わない対照区
列状強度:5条のうち2条目と4条目を列状に間伐
列状弱度:5条のうち3条目(中央条)を列状に間伐
列状上層:2条目と4条目の上層(大径)木から1/2を間伐
全層強度:処理区の構成割合に従い各層を列状強区の間伐材積率で間伐
全層弱度:処理区の構成割合に従い各層を列状弱区の間伐材積率で間伐
下層弱度:下層(小径)木から列状弱度の間伐材積率で間伐
下層強度:上層(大径)木から列状強度の間伐材積率で間伐
上層弱度:上層(大径)木から列状弱度の間伐材積率で間伐
表2 間伐から5年後に実施の伐倒調査結果
処理区 立木本数
(No/ha)
Basal Area
(m2/ha)
林分材積
(m3/ha)
材積成長量
(m3/ha/y)
幹重量
(t/ha)
枝重量
(t/ha)
葉重量
(t/ha)
無処理区 3,880 38.71 246.1 19.4 61.5 23.0 15.0
列状強度 1,725 26.82 168.5 13.2 43.4 13.3 11.8
列状弱度 2.750 34.21 240.5 23.9 66.8 22.2 14.8
列状上層 2,825 34.80 223.2 20.6 70.5 20.5 15.7
全層強度 1,750 25.03 169.6 16.0 47.5 16.2 11.4
全層弱度 2,900 36.35 245.3 19.6 73.8 18.4 15.6
下層弱度 2,225 24.56 157.8 11.9 45.5 11.7 8.8
下層強度 3,100 34.16 242.5 19.5 57.9 20.8 13.9
上層弱度 1,875 33.50 225.5 19.1 68.5 19.8 15.3
p20 fig1
図1 各処理区の間伐時友ぴ8年後の平均直径の比較
表3 8年間の断面積成長率
弱度 無間伐 強度
1 1.90 1.78 1.88
2 1.68 1.68
3 1.60 2.22
4 1.76 1.73
5 1.68 1.52 2.02

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