更新日:2012年7月11日

ここから本文です。

水条件で決まる沙漠の植生

問題名:海外における森林特性の解明及び環境保全技術,持続的利用技術の開発

担当:森林環境部群落生態研究室 斉藤昌宏
生産技術部育林技術科 桜井尚武
元生産技術部更新機構研究室 谷本丈夫(現宇都宮大学)

背景と目的

中国西北部は現在も沙漠化が進行し,植生の衰退が著しい。沙漠化は「乾燥地などにおける,その上に成立する植生を含めた土地の劣化」とされ,その過程には人為の影響が大きく,過耕作,過放牧,樹木の過度の利用,塩類の集積が主な要因として挙げられている。ここでは本来の沙漠地域において自然植生とそれを成立させる環境条件の関係を明らかにすることにより,沙漠化の進行が乾燥地域の植生に及ぼす影響を把握し,沙漠及びその周辺の緑化に資するための基礎資料を収集した結果を紹介する。

成果

中国の新彊ウイグル自治区及び甘粛省はほとんどの範囲が年降水量200mm以下で、乾燥地及び極乾燥地に区分され,大小様々な沙漠が広がっている。これらは主に土壌組成によって礫沙漠,砂沙漠,土沙漠及び塩沙漠に区分され,分布する地形も成立する植生も異なっている。一方, 周辺の山地は5000mを超え,降水量は比較的多く,氷河さえも存在する。これらの山地から供給される水は大小・長短多数の河川を形成し,沙漠の中に貧弱ながらも植生を成立させ,末無川となって消える。大きなものは常時,小さなものは一次的に水が流れ,地形,土壌組成,河川との距離,さらに地下水の配置などを反映して,沙漠に成立する植生も一通りではない。本研究ではタクラマカン沙漠周辺において220区,河西回廊において33区のプロットを調査し,地形,土壌, 塩類集積などと植生の関係を解析した。

河西回廊のデータをもとに主成分分析を行った結果,図1のように七つの種群が区分された。これらの種群は生態的,形態的特徴が異なり, 生育地も異なっていた。図の上部に位置する種群は礫沙漠で乾燥度の高い場所に出現する種であり,下部は河川の周辺など乾燥地の中では相対的に湿潤なところに出現する種である。また,埋砂耐性が大きく,乾燥にも耐える少数の種は基質の砂が絶えず、移動するところに出現する。タクラマカン沙漠で収集したデータに同様の解析を行った結果,乾燥地に成立する植物群落は荒漠洪水型(口絵写真1(JPG:185KB)),地下水依存型(口絵写真2(JPG:135KB)),塩類集積型(口絵写真3(JPG:189KB))及び半固定砂地型(口絵写真4(JPG:150KB))の四つにまとめられた。ただし,図 2に示すように水の供給される期間,量,水質の違いによって成立する群落は異なる。

p48 fig1
図1 主成分分析による出現種の位置づけ(河西回廊)
p48 fig2
図2 乾燥地域における地形,水条件と植生配置の関係

お問い合わせ

所属課室:企画部広報普及科編集刊行係

〒305-8687 茨城県つくば市松の里1

電話番号:029-829-8373

FAX番号:029-873-0844

Email:kanko@ffpri.affrc.go.jp