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更新日:2012年8月24日

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Global Positioning System(GPS)と地理情報システムGeographic lnformation System, GlS)で巨木を調査し,管理する

研究問題名: XIII.豪雨・急傾斜地域の森林管理技術の高度化

四国支所 経営研究室 小谷 英司・松村 直人(現三重大学)

背景と目的

高知県馬路村国有林の魚梁瀬スギは,天井板などに利用される高齢級大径材として有名である。しかし,経済的価値が非常に高いにも関わらず,単木単位での管理が十分に行われてこなかった。その原因の一つとして,林内で立木個体の位置を効率的かつ簡易に把握する方法がこれまでなく,調査と資料の整理が困難であった点が挙げられる。ところが近年,簡単に緯度経度を把握するGPSが山岳域森林内でも利用可能となってきている。そこで,魚梁瀬スギを対象として,森林内での立木位置把握にGPSを利用し,諸データをGISで統合した立木個体管理システムを開発した。

成果

山岳域森林内においてGPS (Trimble Pathfinder Pro XR)で測量できるか否か,およびその精度を検討するために魚梁瀬千本山保護林で2つの実験を行った。先ず,千本山尾根筋の魚梁瀬スギ40本のGPS測量を行い,同時にコンパス測量器具で三角点から立木位置の測量を行い,GPSの精度検証を行った。GPSの設定はビーコン補正利用,30秒間受信,受信感度最高とした。作業風景を図1に示した。誤差検討のためにコンパス測量とGPS測量の測量結果を重ねたものを図2に示した。結果として,全て測量可能であり,水平方向の誤差は平均5.lm,最大18.7mであった。次いで,GPS電波の受信障害物である地形の影響を検討するために,尾根筋から谷底の川そばまで林内に4カ所調査地を設定し,GPS測量を行った。この結果,いずれの地点でもほぼGPS測量でき,測量結果のバラツキはGPS衛星受信個数が4個以上ならば精度検証実験と同レベルであった。魚梁瀬スギの立木密度は最大でも150本/ha程度,つまり平均立木間隔が8mであるので,以上の実験結果と比較して,山岳域森林内でもGPS電波が受信出来さえすればGPS測量は魚梁瀬スギのような天然生大径木の個体管理には十分な精度が確保できることが明らかとなった。

GPS測量結果をGIS上で整理し,既存の資料と統合した立木個体管理システムの構成と表示例を図3,4に示した。このシステムの利点として,1)GPSで簡易かつ効率的に立木個体の調査ができる,2)GISで整理することにより何万本でも資料の保存ができる,3)GISにより資料の相互参照が容易である,4)ノートパソコン上でGISとGPSをリアルタイムで連動してGPSナビゲーションシステムとし,野外での立木の探索や集材など現場での管理作業に利用できる,等がある。これまでの森林基本図による森林管理手法では不可能であったことが,簡易かつ効率的に分かりやすく可能となった。

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図1 魚梁瀬スギのGPS測量作業風景

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図2 GPS測量結果とコンパス測量結果の比較(注:GPS測量の誤差は,大きさ方向ともにランダムであり,広大な森林を管理する上では,全く問題のない程度の誤差である)

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図3 立木個体管理システムの構成図

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図4 立木個体管理システムの表示例(地図情報,測量情報,属性データベース,写真など,複数のデータを相互に参照しながら,屋内でも野外でも効率的に作業が出来る)

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