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更新日:2025年8月13日

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早生樹等の国産未活用広葉樹材を家具・内装材として利用拡大するための技術開発

1. 課題名称

早生樹等の国産未活用広葉樹材を家具・内装材として利用拡大するための技術開発

2. 研究期間

2022年6月~2025年3月

3. 研究体制

代表機関:森林総合研究所(木材加工・特性研究領域、林業経営・政策研究領域、北海道支所、東北支所、四国支所、九州支所)

共同研究機関:⼭形県⼯業技術センター、岐⾩県⽣活技術研究所、福岡県農林業総合試験場資源活用研究センター、⾶騨産業株式会社

協力機関:山形県広葉樹利用拡大協議会、株式会社徳正合板、株式会社ウッド・マイスター、有限会社山形工房、飛騨市広葉樹活用推進コンソーシアム、一般社団法人大川スタンドバイツリー、株式会社ウエキ産業、植木林業株式会社、福岡県工業技術センター インテリア研究所

研究協力者:長野麻子氏(株式会社モリアゲ)、片岡厚(森林総合研究所)、嶋瀬拓也(森林総合研究所)、服部力(森林総合研究所)

4. 課題責任者

杉山真樹(木材加工・特性研究領域)

5. プロジェクト設定の背景

現在、木製の家具や内装材の原料である広葉樹材の8割以上を輸入材に依存しているが、世界的な資源減少や新興国の購買力の向上に加えて、ウッドショックやウクライナ情勢の影響により、輸入広葉樹材の価格は高騰している。国内資源への転換が模索されている中、代替資源として国産早生樹材が注目されている。しかし、早生樹種の植栽は始まったばかりで利用実績が乏しいこと、材部に占める未成熟材の比率が大きく、加工時や製品になってからの割れや狂いの発生のおそれがあるなど不安要素も残されている。そこで、森林総研では、令和元年度から3年間交付金プロジェクト「国産早生樹種の用材利用に向けた材質・加工特性の解明」を実施し、早生樹4樹種について、用材利用に向けた基盤的研究を進めてきた。また、里山林に豊富に存在するものの、利活用が進んでいない多種多彩な広葉樹資源の利用も期待されているが、材質・物理特性、加工性に関するデータが未整備で、製品製造に必要な塗装、接着、曲木加工に関する技術も確立する必要がある。早生樹の一部は交付金プロジェクトでも対象としたが、データ数がまだ少なく、さらにデータの蓄積を進める必要がある。

6. プロジェクトの目的

  • 未活用広葉樹4樹種(センダン、ハンノキ、ホオノキ、コナラ)の材質・物理特性、製材・切削加工特性を明らかにするとともに、乾燥スケジュールを開発する。
  • 未活用広葉樹材の家具・内装材として求められる選木基準を明らかにするとともに、センダンについて業界の自主規格となりうるグレーディング基準の試案を作成する。
  • 未活用広葉樹材の家具・内装材利用技術として、塗装及び部材の接着技術や小径材の利用技術、曲木加工技術を開発するとともに、家具・内装材の試験的な製造を実施する。

7. 研究の方法

未活用広葉樹材の加工技術としては、地域において家具・内装材として有望視されている広葉樹4樹種(センダン、ハンノキ、ホオノキ、コナラ)について、木材の材質や物理特性を把握するとともに、原木を製材した際の歩留まりや製材品の品質、製材品を切削加工した際の表面性状を評価する。また、製材品の乾燥性について解明するとともに、製材・乾燥現場で利用可能な乾燥スケジュールの開発を行う。
家具・内装材としての利⽤技術としては、家具・内装材製造業者が広葉樹製材品を購⼊する際に活⽤できるグレーディング基準の試案を作成するとともに、製品の製造時に不可⽋となる⽊材表⾯の塗装及び部材の接着技術の⾼度化を図る。また、⼩径広葉樹材の利⽤で問題となる部材乾燥後の変形を抑制する技術及び挽板や⼩⾓材を集成する技術を開発する。さらに、脚物家具を製造する際に必要となる曲⽊加⼯について未活⽤広葉樹材に適⽤するための技術開発を⾏うとともに、試験的な製造実証を⾏う。

8. プロジェクトの成果

未活⽤広葉樹材の加⼯技術として、センダン、ハンノキ、ホオノキ、コナラの4樹種について、⽊材の材質や物理的性質を明らかにした。また、製材試験及びプレーナー(⾃動かんな盤)による平⾯切削加⼯試験から、製材・切削加⼯特性を明らかにするとともに、ルータ加工特性についても検討を行った。さらに、これら4樹種について、乾燥スケジュール簡易決定法に基づく理論的な乾燥スケジュールを作成するとともに、乾燥原板生産のための人工乾燥スケジュールを作成した。
家具・内装材としての利⽤技術については、家具・内装材として求められる広葉樹原木の選⽊基準を明らかにした上で、センダンを対象として業界の⾃主規格となりうる広葉樹板材のグレーディング基準の試案を作成し、これに基づきグレーディングの実証実験を行った。また、国産広葉樹材に適用可能な塗装及び部材の接着技術を開発するとともに、小径木利用技術の開発として、部材乾燥後の変形を抑制する技術及び異樹種集成における接着性能の評価及び変形抑制技術の開発を行った。さらに、曲木技術の開発としてはセンダン、ハンノキ、ホオノキ、コナラの4樹種について最適曲木条件を明らかにするとともに、椅子の試作、部材強度評価を行い、家具用材としての有用性を明らかにした。

9. 成果の活用

成果については、学会発表や所属機関の紀要等を通じて⼀般に利⽤可能な形で公表を進めているほか、センダン、ハンノキ、ホオノキ、コナラの材質、物理、加工、乾燥特性に関するデータを掲載したパンフレット及びセンダン板材のグレーディング試行実験に関する成果パンフレットを発行し、ホームページ上で公開している。また、成果を応用した様々な試作品を作成し、WOODコレクション(モクコレ)等の展示会で公開するとともに、椅子試作品については消費者ニーズ把握のため来場者アンケートを実施した。また、成果報告の場として、2024年10月に岐阜県飛騨市において成果報告会を、2025年3月に森林産業コミュニティ・ネットワーク(FICoN)の第12回ウェブ検討会において、成果の報告を行った。

2024年12月19日、20日に東京ビッグサイトで開催された木製品の展示会モクコレ2024プラスでのブース展示の様子
写真1 WOODコレクション(モクコレ)2024Plus
(2024年12月19-20日 東京ビッグサイト)

2024年10月29日に飛騨市古川町公民館で開催した成果報告会の様子
写真2 成果報告会 in 飛騨市
(2024年10月29日 飛騨市古川町公民館)

試作品の椅子
写真3 椅子試作品(飛騨産業(株)作製)
 

試作品のスタッキングテーブルで天板は2樹種を組み合わせて作られている
写真4 2樹種組み合わせスタッキングテーブル
(加子母森林組合 作製)

試作品の木製ネクタイ
写真5 木製ネクタイ(ノクターレ 作製)
 

試作品のスマートフォンスピーカー
写真6 スマートフォンスピーカー
((株)ウッド・マイスター 作製)

10. 成果に関する刊行物等

WOODコレクション(モクコレ)2024Plusで掲示した成果ポスター

 

パンフレット

論文等

11. 研究資金

 

 

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