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里山林のササを刈り取るとゴミムシの多様性は低下する

2009年11月17日掲載

論文名 東京農工大学Field Museum 多摩丘陵および東京都立七生公園のゴミムシ類群集と林床植生の管理
著者(所属) 松本 和馬 (森林昆虫研究領域)
掲載誌

環境動物昆虫学会誌 2009年

内容紹介  里山保全活動では、高くなった木を残して、林床に繁るササを刈り取ることがよく行われます。主な目的は生物多様性を保全することですが、実際にササの刈り取りで多様性は高まるのでしょうか。ゴミムシ類は地上を歩き回る種が多いため地表の状態を良く反映し、森林の多様性調査でも環境指標としてよく用いられる昆虫です。このゴミムシを用いて、ササの刈り取りの影響を調べました。ササを放置した林(八王子市)と、刈り取り管理している雑木林(日野市)で比較したところ、放置林の方が管理林よりもゴミムシの種数が多く、安定な環境を好む森林性の種も多く住んでいました。ササの刈り取りによる攪乱があると、これらの森林性種は生息しなくなるうえ、上木を残す管理(高林管理)では明るい環境の好きな草原性種は住み着きません。つまり、上木を残したササの刈り取りは、ゴミムシの多様性保全上適切な植生管理とはいえません。一方、木が小さく草原性種が多かったと考えられる昔の里山のゴミムシ相を成立させるには、短い周期の皆伐更新による管理を行うべきですが、その場合には現在生息している森林性種は失われるでしょう。里山の植生管理は、どのような生物相の保全をめざすのかを明確にした上で行うことが重要です。

 

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