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外来種で崩壊する花粉媒介システム―小笠原の在来植物は今―

 2011年11月24日掲載

論文名 Alien pollinator promotes invasive mutualism in an insular pollination system.(島嶼送粉系における外来ポリネーターの侵略的な相利共生関係の促進)
著者(所属)

安部哲人(森林総研)・加藤夕佳(首都大学東京)・和田勉之(小笠原野生生物研究会)・牧野俊一(森林総研)・大河内勇(森林総研)

掲載誌

Biological Invasions誌 13巻 4号(2011年4月発行)

DOI: 10.1007/s10530-010-9882-9(外部サイトへリンク)

内容紹介

今夏に世界自然遺産に登録された小笠原諸島は、多くの固有種が生活する独自の生態系が形成されています。その一方で、小笠原諸島では人が持ち込んだ外来種によって生態系にさまざまな影響が現れています。その顕著な例として、外来トカゲのグリーンアノールによる捕食の影響で、小笠原父島・母島の在来種の植物の花粉を運ぶ昆虫(ハナバチなど)が著しく数を減らしてしまったことが挙げられます。この変化は、昆虫に花粉を運んでもらう植物に影響しているのでしょうか?調査の結果、固有のハナバチ類は在来植物の花に高頻度で訪れるのに対して、外来のセイヨウミツバチは外来植物に多く訪れており、外来植物の結実が良い一方で、ハナバチが減少した結果、固有植物は花粉不足のため結実が少なくなっていました。このままでは、固有植物の衰退を招きかねません。衰退に至らなくとも、小笠原のハナバチとともに進化して作り上げられてきた花の特徴が、外来のセイヨウミツバチに適した形に進化していく可能性も危惧されます。このことから、生態系を健全にするためにグリーンアノールを駆除し、小笠原固有のハナバチを復活させることが必要であることが分かりました。同時に、外来種による撹乱が固有の花の進化に与える影響についても注意深く研究していきます。

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