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心材形成の場で働いている遺伝子を針葉樹から初めて大量に収集 ―心材形成機構の解明に向けて―

 2012年1月18日掲載

論文名 Collection of expressed genes from the transition zone of Cryptomeria japonica in the dormant season (休眠期のスギ移行材で発現している遺伝子の収集と解析)
著者(所属)

吉田 和正、二村 典宏、西口 満 (生物工学研究領域)

掲載誌

Journal of Wood Science (オンライン版) DOI:10.1007/s10086-011-1234-6(外部サイトへリンク)

内容紹介

樹木の内部にできる心材は、辺材とは性質が異なり木材の利用に様々な影響を及ぼします。心材形成を制御するためには、その形成機構を遺伝子レベルで解明する必要があります。そこで、心材形成が進行しているとされる休眠期に、心材形成の場である移行材(辺材と心材の間の領域)で働いている遺伝子の収集を行いました。11月のスギの移行材から744種類の遺伝子を収集し、塩基配列の解析により291種類について機能を推定しました。それらのうち4分の1はタンパク質の合成や修復に関わる遺伝子で占められ、多くの組織で細胞の活性が低下または停止する冬季においても、移行材では細胞の活動が維持されていることがうかがわれました。さらに、心材形成とかかわりがあると報告されている酵素等に対応する遺伝子を20種類選び、心材形成中の休眠期(11月)と心材形成が停止していると考えられる初夏(6月)のスギの移行材で働いている遺伝子の量を比較したところ、9種類の遺伝子は6月よりも11月で多いことがわかりました。これらの遺伝子は、糖の分解を通してエネルギーと心材成分等の材料を供給する酵素や、低温・乾燥等の不良環境への耐性に関するタンパク質をつくるものがほとんどで、冬の条件に対応しながら移行材の生理活動を維持する仕組みの一端が明らかになりました。本研究は、針葉樹の移行材で働いている遺伝子を初めて大量に収集したもので、心材の形成過程を理解するのに役立ちます。

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