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2012年2月20日掲載
論文名 | 弥生時代から古墳時代の関東地方におけるイチイガシの木材資源利用 |
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著者(所属) |
能城 修一(木材特性研究領域)、佐々木 由香(株式会社パレオ・ラボ)、鈴木 三男(東北大学植物園)、村上 由美子(京都大学総合研究博物館) |
掲載誌 |
植生史研究、21巻1号 (2012年)予定 |
内容紹介 |
弥生人が鋤鍬の材料としてイチイガシをよく使っていたことが分かりました。木材の細胞から樹種を鑑定するのは、なかなか難しいものですが、イチイガシの木材は道管の大きさを調べることで、他のコナラ属アカガシ亜属の樹種から区別することができます。この新しい判定基準を使って、関東地方で弥生時代中期から古墳時代の7遺跡から出土し、アカガシ亜属と判定されていた木材を調べ直してみました。まず、海岸に近くてイチイガシが生育する神奈川県と千葉県の遺跡では、鋤鍬にイチイガシが選択的に利用されていたことがわかりました。また、鋤鍬の完成品だけでなく、未成品や原材でもイチイガシの比率が高く、遺跡周辺で原材の採取から加工までが行われていたと想定されました。これに対し、イチイガシの生育していない内陸部の埼玉県と群馬県の遺跡ではイチイガシ以外のアカガシ亜属やコナラ属クヌギ節が鋤鍬に用いられていました。しかし、イチイガシの鋤鍬も少数ではあるものの、使われていました。イチイガシの木材はアカガシ亜属の中ではとくに強度的に強いわけではありませんが、比重が比較的低く、軽い割には強いという特性があります。この特性を知って、海岸部ではもっぱらイチイガシを使っていましたが、内陸部では移入したイチイガシの鋤鍬では足りないので、他の樹種で代用していたのではないかと考えられました。 |
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