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熱帯雨林の大木にも水資源の浪費型と節約型が存在する

 2012年2月20日掲載

論文名 Interspecific variation in leaf water use associated with drought tolerance in four emergent dipterocarp species of a tropical rain forest in Borneo (ボルネオ熱帯雨林におけるフタバガキ巨大高木4種の乾燥耐性に関する葉の水利用特性)
著者(所属)

広見 徹(愛媛大学)・市栄 智明(高知大学)・田中 憲蔵(森林総研 国際連携推進拠点)・二宮 生夫(愛媛大学)

掲載誌

Journal of Forest Research印刷中 (2012年予定、オンライン公開済み) DOI: 10.1007/s10310-011-0303-4(外部サイトへリンク)

内容紹介

東南アジアの熱帯雨林地域では地球規模での気候変動のため、今後降雨パターンが変化し、乾燥化が進む危険性が指摘されています。熱帯雨林は常に湿潤な環境にあるため、大木でも乾燥に弱い可能性があり、場合によっては枯死する恐れもあります。実際、1997-98年に起きたボルネオ島の大干ばつの際には樹高が40mを越える大木ですら枯死しました。そこで、熱帯雨林の樹木がどれほど乾燥に弱いのか、水利用特性から検討しました。樹木は光合成をするために葉の裏にある穴(気孔)を開いて二酸化炭素を取り込みますが、同時に根から吸い上げた水が蒸散として、その気孔から大気に放出されます。気孔を開いて光合成を活発に行うと、水消費も増加するというジレンマを抱え、水の消費量が供給量を上回る状態が続けば枯死してしまいます。

ボルネオ島の樹高40mを超える巨大高木の葉の水利用特性を調べた結果、近縁な樹木の中でも活発に光合成を行うために気孔を大きく開け続けて水を大量消費するグループと、気孔をそれほど開けずに少ない水消費量で生活する樹木があることが分かりました。さらに、水を大量消費するグループは光合成量が多いので成長が速い反面、乾燥に弱いと考えられ、実際、ボルネオ島の大干ばつが起きた際の枯死率が他の樹種より高い傾向がありました。今後、気候変動で熱帯林の乾燥化が進むとこれら成長の早い浪費型の樹木の割合が低下し、森林の動態や多様性などに影響があると考えられます。 

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