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オゾンによる樹木の成長低下は幹への光合成産物の分配量の減少が原因

2012年6月8日掲載

論文名 How closely does stem growth of adult beech (Fagus sylvatica) relate to net carbon gain under experimentally enhanced ozone stress? (実験的にオゾンストレスをかけたヨーロッパブナでの幹成長の低下はどのくらい炭素吸収と関係しているか?)
著者(所属)

北尾 光俊(森林総研 植物生態研究領域)、J. Barbro Winkler、Markus Löw、Angela J. Nunn、Daniel Kuptz、Karl-Heinz Häberle、Ilja M. Reiter、Rainer Matyssek(ミュンヘン工科大)

掲載誌

Environmental Pollution、166: 108-115(2012年7月)、DOI: 10.1016/j.envpol.2012.03.014(外部サイトへリンク)

内容紹介

ドイツ、ミュンヘン工科大学では、樹齢およそ60年、樹高も30m近いヨーロッパブナ林を対象として、人工的にオゾンを付加する大規模な野外実験が行われ(2000~2007年)、オゾン濃度が2倍に上昇した場合には、幹の成長量が40%以上も低下するという衝撃的な事実が明らかとなっています。本研究では、ミュンヘン工科大学との共同研究により、オゾン濃度を上昇させた場合のヨーロッパブナ樹冠内の葉の光合成の低下が、樹木の成長量の低下にどれだけ関与しているかを明らかにしました。光合成の低下だけではせいぜい10%程度の成長低下にしかならないことから、40%以上も成長が低下するのは光合成量が減るだけでなく、光合成産物が少ししか幹に分配されなくなることが成長低下の大きな要因であると考えられました。この結果から、地球温暖化対策として森林の炭素固定能を維持するために、オゾンによる大気汚染対策の重要性が示されました。

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