研究紹介 > 研究成果 > 研究最前線 2012年紹介分 > 越冬前のクマの主食に地域差—西中国地方での大量出没のカギを解明—
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2012年8月23日掲載
論文名 | 西中国山地のツキノワグマの食性の特徴について |
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著者(所属) |
大井徹(鳥獣生態研究室)・中下留美子(鳥獣生態研究室)・藤田昌弘(自然環境研究センター)・菅井強司(自然環境研究センター)・藤井猛(広島県自然環境課) |
掲載誌 |
哺乳類科学、52巻1号:1-13ページ、2012年6月 |
内容紹介 |
近年、たくさんのツキノワグマが人里に出没し、人身被害が例年の2~3倍にも増える「大量出没」が頻繁に起こっています。その主な原因は、クマが越冬の準備をする秋に、重要な食物である樹木の果実が不作になることだとわかっています。食物となる主な樹種は中部地方の日本海側や東北地方ではブナ、ミズナラですが、西中国山地のクマについては不明でした。この地方の個体群は環境省のレッドリストで絶滅の恐れがあるとされており、人身事故防止のみならず、保全のためにも食物を知ることは重要です。 西中国山地の山中で採取したクマの糞と、人里周辺で捕獲された個体の胃内容物を基に、大量出没の鍵になっている越冬準備期の樹種を探ってみたところ、 彼らが秋に依存している食物はコナラ属 の堅果(ドングリ)に加えて、他の地域ではさほど重要性が指摘されてこなかったミズキ属の果実であることが判明しました。そして、クマが大量出没した年には、これら二種類の果実が食物に占める割合が極端に低くなりこともわかり、それがクマの人里出没に大きく影響している可能性が示唆されました。 この結果から、クマの大量出没の鍵となる植物は地域によって異なること、西中国地方では、コナラ属とミズキ属の樹木の実り具合をモニタリングすることによって、クマの出没を予測できることがわかりました。クマの出没が予測できれば、予防措置をとることによって出没による被害を未然に防ぐことができます。 |
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