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欧州の先進タワーヤーダは日本の急峻で複雑な地形でも高い生産性を実現

2012年9月7日掲載

論文名 先進林業機械として導入されたタワーヤーダによる間伐作業システムの開発 ―架線下における上げ荷集材作業の生産性―
著者(所属)

中澤 昌彦・吉田 智佳史・佐々木 達也・陣川 雅樹・田中 良明・鈴木 秀典・上村 巧・伊藤 崇之(林業工学研究領域)・山﨑 敏彦(高知県立森林技術センター)・大矢 信次郎(長野県林業総合センター)・古川 邦明(岐阜県森林研究所)・今冨 裕樹(四国支所、現東京農業大学大学院農学研究科)

掲載誌

森林利用学会誌、27巻3号、森林利用学会、2012.7

内容紹介

わが国の森林・林業再生のため、路網整備や機械化等による立木の新たな集材技術の開発が求められていますが、急峻で崩れやすい地形の場所では作業路網の整備が困難なため、架線による集材が不可欠です。架線集材は、日本では建設機械のバックホウにウィンチをつけたスイングヤーダが安価なため主流となっていますが、集材可能距離が短いことから、路網の整備が難しい急峻な場所には向いていません。長い距離でも集材できる既存のタワーヤーダ(元柱となるタワーとウィンチを装備した移動可能な集材機)もありますが、生産性が低く普及していません。そこで、生産性が高いと言われている欧州の先進タワーヤーダを用いて、四国の急峻な地形のスギ・ヒノキ人工林において間伐作業の生産性を調べました。その結果、このタワーヤーダは主索の中間サポート(中間支持金具)を使用することで途中に障害物があるような複雑な地形であっても集材距離を長く伸ばせること、搬器(主索を移動し木材を運搬する装置)タワー本体のパワーが強いこと、2台の携帯リモコン送信器で柔軟な搬器(主索上を移動し木材を運搬する装置)操作ができることが、生産性を上げている要因であることが明らかになりました。架線下の上げ荷集材作業における生産性予測式を導出して試算したところ、既存タワーヤーダよりも1.5倍程度の高い生産性が得られると予測されました。

この結果は、欧州の先進タワーヤーダが急峻で複雑な地形の場所においても高い生産性を実現できることを示唆しており、今後のわが国の急峻な山地における伐出システムに活用されることが期待されます。

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