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2012年10月25日掲載
論文名 | Fine-root dynamics in sugi (Cryptomeria japonica) under manipulated soil nitrogen conditions(人為的に変化させた土壌窒素条件下におけるスギ細根の動態) |
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著者(所属) |
野口享太郎(四国支所)、長倉淳子(立地環境研究領域)、Bohdan Konôpka(スロバキア森林研)、阪田匡司(立地環境研究領域)、金子真司(立地環境研究領域)、高橋正通(研究コーディネータ) |
掲載誌 |
Plant and Soil, DOI: 10.1007/s11104-012-1354-9 |
内容紹介 |
都市周辺では、大気汚染により森林にもたらされる窒素が増えています。窒素は植物の成長に必要な栄養元素ですが、多すぎると成長に悪影響を及ぼすことがあります。しかし、土壌窒素の増加に対する反応は、樹種により傾向が異なり、スギの場合がどうであるのか、明らかではありませんでした。 そこで、本研究では土壌窒素の増加がスギの細根(直径1 mm未満の根)の成長に与える影響を調べるため、茨城県のスギ人工林の土壌に毎月28 kg/haの窒素を3年間散布しました。この窒素量は、降水により供給される窒素量の約30倍にあたります。 窒素散布により土壌はやや酸性になりましたが、スギの細根の成長量は増加し、細根の枯死・脱落量には変化が見られませんでした。また、新たに生まれた細根の枯死・脱落の割合も低下しました。これらの結果は、スギ林では窒素沈着量が増えると細根の生産量が増加するだけでなく、細根の寿命が延び、養分吸収などの機能がより長期間にわたり発揮される可能性を示しています。 窒素量が増えてもスギは根系を発達させ、養分吸収機能を維持できる樹木と考えられます。さらに土壌中の窒素量の増加が続く可能性があるので、今後も研究していきます。 |
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