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2016年1月29日掲載
論文名 |
Effect of stem radial growth on seasonal and spatial variations in stem CO2 efflux of Chamaecyparis obtusa (ヒノキの幹における二酸化炭素放出速度の季節変化と垂直変化に幹の肥大成長が与える影響) |
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著者(所属) |
荒木 眞岳(植物生態研究領域)、梶本 卓也(植物生態研究領域)、韓 慶民(北海道支所)、川崎 達郎(企画部)、宇都木 玄(植物生態研究領域)、玉泉 幸一郎(九州大学)、千葉 幸弘(研究コーディネータ) |
掲載誌 |
Trees, 29: 499-514, Springer, April 2015, DOI: 10.1007/s00468-014-1127-6(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
樹木は、光合成によって大気中の二酸化炭素を吸収する一方、同時に呼吸によって二酸化炭素を放出しています。そのため、地球環境変動にともなう森林の炭素固定機能の変化を予測するためには、樹木の呼吸のメカニズムを解明することが重要です。特に林業における生産物である幹について、その呼吸特性は葉の光合成に比べて未解明な点が多く残されていました。 そこで、50年生のヒノキ5個体を対象に、幹表面からの二酸化炭素放出速度(以下、呼吸速度)を幹に沿って色々な高さで2年間測定しました。呼吸速度は6月にピークを持つ明瞭な季節変化を示しましたが、この季節変化は気温だけでなく幹の肥大成長の季節変化を説明変数に加えることで再現できることがわかりました。また、年間呼吸量には同じ個体内でも幹に沿った垂直変化や同じ高さでも個体による差が認められましたが、この個体内・個体間差は年間肥大成長量の影響を強く受けていることが明らかとなりました。以上の結果から個体あたりの年間呼吸量を推定し、幹の年間成長量と年間呼吸量を比較すると、樹高が高い優勢木では成長量と呼吸量の比はほぼ50:50であったのに対し、樹高が低い劣勢木では15:85であり成長よりも呼吸が卓越することがわかりました。 本研究の成果は、森林の炭素収支モデルの精緻化に貢献するとともに、幹の生産効率を高めるための間伐法など森林管理に応用できます。 |
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