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2016年1月29日掲載
論文名 |
九州北部の森林小流域における土壌から渓流への水質変化 |
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著者(所属) |
釣田 竜也・大貫 靖浩(立地環境研究領域)、壁谷 直記(九州支所) |
掲載誌 |
地形、36巻3号、173-193、日本地形学連合、2015年7月、http://ci.nii.ac.jp/naid/40020547755 |
内容紹介 |
森林土壌には生物活動に由来する大きな隙間から土粒子間の小さな隙間までいろいろなサイズの隙間が存在しています。土壌に浸み込んだ雨水はこれらの隙間に伝わって流れていきます。その過程で、土壌と反応して酸が中和されたり、土壌からミネラルが加わったりして水質が変化します。大きい隙間と小さい隙間では水の移動速度が異なるため、水質を変化させる働きも異なると考えられますが、それぞれを分けて採取することが困難でした。 そこで本研究では、土壌中の大きな隙間をすばやく流れる水(選択流)と、土粒子間の小さな隙間をゆっくり流れる水(マトリックス流)を分けて採取する方法を考案し、九州北部の森林において、土壌水の量と質を調べました。その結果、土壌の浅いところでは大雨の時に「選択流」がよく観測されましたが、土壌の深いところでは「選択流」はあまり観測されませんでした。また、「選択流」の水質は土壌に浸み込む直前の落葉層通過後の水質に近いことがわかりました。これに比べると、「マトリックス流」には落葉層通過水に含まれない鉱物由来のケイ酸などの成分が含まれ、土壌をゆっくりと通過する際に水質が大きく変化したことがわかりました。 このように、大きな隙間は雨水を速やかに土壌に浸み込ませることで森林の保水機能や地表流の発生を抑える効果をもつのに対して、小さな隙間は水を長時間保持するとともに水質形成に大きく貢献していることが分かりました。 |
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