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ニホンミツバチの安定同位体比の違いは生息地環境を反映する

2016年7月4日掲載

論文名

Stable nitrogen and carbon isotope ratios in wild native honeybees: the influence of land use and climate (野生在来ミツバチの窒素および炭素安定同位体比:土地利用と気候の効果)

著者(所属)

滝 久智(森林昆虫研究領域)、池田 紘士(弘前大学)、永光 輝義(森林総研北海道支所)、安田 美香(森林総研特別研究員)、杉浦 真治・前藤 薫(神戸大学)、岡部 貴美子(生物多様性研究拠点)

掲載誌

Biodiversity and Conservation, Online、DOI: 10.​1007/​s10531-016-1114-x(外部サイトへリンク)

内容紹介

ニホンミツバチは、日本在来の唯一のミツバチであり、花粉媒介(調整サービス)、蜂蜜供給(供給サービス)、趣味の養蜂(文化サービス)などの生態系サービスと呼ばれる自然の恵みをもたらすことから、私たちの生活になじみの深い昆虫です。

このたび、全国各地で採集したニホンミツバチ個体群を用いて、体を構成している窒素と炭素の安定同位体比《注1》を測定し、その比率の相違がどういった環境要因によって生み出されているのかを検証しました。その結果、窒素安定同位体比はニホンミツバチの生息地周囲に存在する森林の影響を、炭素安定同位体比はニホンミツバチの生息地周囲に存在する都市や農地の影響を受けていることが明らかになりました。

これら結果は、ニホンミツバチが生息地周囲の環境に存在する餌を柔軟に利用していることを示すとともに、窒素と炭素の同位体比などを用いることによって、ニホンミツバチが周囲の環境状況を表す指標になり得る可能性があることを示しています。

 

 

《注1》 安定同位体

原子核内の陽子数は同じであっても、中性子数が異なるため、全体の重さが異なる原子が存在します。多くは不安定であり時間が経つと崩壊しますが、一部安定に存在するものがありそれを安定同位体と呼びます。窒素や炭素など同じ元素の安定同位体であっても、各々の性質は異なっているため、生物の体などの物質に含まれる安定同位体の割合が環境によって異なることが知られています。

 

 

写真:ニホンミツバチ

(写真:ニホンミツバチ)

 

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