研究紹介 > 研究成果 > 研究最前線 2016年紹介分 > 春のアカマツ林の地面からは強く揮発性化合物が放出されていた
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2016年7月29日掲載
論文名 |
アカマツ林床におけるα-ピネン放出量の空間分布特性 |
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著者(所属) |
深山 貴文(森林防災研究領域)、森下 智陽(四国支所)、 奥村 智憲(京都大学)、宮下 俊一郎(関西支所)、高梨 聡・吉藤 奈津子(森林防災研究領域) |
掲載誌 |
日本森林学会誌、 98巻2号、59-64、2016年6月、DOI:10.4005/jjfs.98.59 |
内容紹介 |
α-ピネンに代表される森林起源の揮発性化合物(BVOC)は、森の香り成分として親しまれる半面、NOxと光化学反応すると光化学スモッグとなるオゾンやエアロゾルを生成します。アジア大陸から越境するオゾンと国内のBVOCから生成するオゾンの割合を切り分けるために、国内の森林のBVOC放出特性と放出量の評価が急務となっていることから、森林総合研究所ではCO2タワー観測網を活用したBVOC観測網の構築を進めています。 本研究では従来の土壌呼吸量の測定手法を応用し、α-ピネン土壌放出量の多点観測手法を開発しました。春季の林床には落葉の堆積量の大小に関係なく、高放出地点が多数出現することが明らかになりました。この高放出は落葉より下の根圏からは発生しなかったため、冬季に花芽を覆っていた樹脂が落葉表面に付着して強い放出源となっている可能性が考えられました。春季の平均土壌α-ピネン放出量は、既往の日平均群落放出量の報告例と比較した場合、3~5割を占める大きな値でした。この結果は、これまで考慮されていなかった土壌放出がα-ピネンの放出源として重要であることを示しています。 この研究は、オゾンやエアロゾルの原因となる森林のBVOC放出量を積み上げ法で高精度に推定することに貢献します。森林総合研究所は全国5か所に多様な植生のCO2タワーサイトを持つことから、これらのサイトにも観測対象を広げ、質量分析器を用いて様々なBVOCの放出源の解明を行っていく予定です。
![]() (写真:春に花芽の樹脂が林床に散布され、揮発性化合物の高放出源となっている可能性がある)
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