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木本性のツル植物は、明るい場所に生えた木にとりつき、その木といっしょに大きくなる

2016年9月12日掲載

論文名

Liana distribution andcommunity structure in an old-growth temperate forest: The relative importanceof past disturbances, host trees, and microsite characteristics (温帯林における木本性ツル植物の分布と群集構造:撹乱履歴、ホスト樹木および微環境特性の相対的な影響)

著者(所属)

森 秀樹・上條 隆志(筑波大)、正木 隆(森林植生研究領域)

掲載誌

Plant Ecology、August 2016、DOI:10.1007/s11258-016-0641-6(外部サイトへリンク)

内容紹介

ツル植物は林業では厄介者です。そこで「まずは敵を知る」ために原生的な森林で木本性のツル植物の本来の生態を調査し、どのような環境、どのような樹木に依存しているかを調べてみました。

北茨城の老齢林に設定されている小川試験地の6ha調査区で詳しく調べた結果、直径5cm以上の樹木4,800本のうちの15%(700本)にツル植物がとりついていました。太いツルは太い樹木に多くとりついている傾向が見られました。このことからツルは、宿主の樹木がまだ若いうちにとりつき始めたと考えられます。またツルにとりつかれている樹木は、明るい場所を好み、成長も早い種類にかたよっている傾向がみられました。一方で、土壌の水分環境や微地形はツル植物の分布にほとんど関係のないことがわかりました。

以上のことから、「昼なお暗き」原生的な森林内で、ツルは台風などで木が倒れた明るい場所に成立した樹木に、それがまだ細いうちにとりつき、その樹木の成長とともに(あるいは宿主を乗り換えながら)上へと成長し、太くなっていくと推測されました。こういったツルの生態を考えると、林業の場ではツルはやはり若いうちに見つけて除去することが効果的であることが示唆されます。

 

写真:調査地内でフジに巻き付かれた樹木


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(写真:調査地内でフジに巻き付かれた樹木)

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