研究紹介 > 研究成果 > 研究最前線 2016年紹介分 > アルツハイマー型痴呆症に効果が期待されるタキシフォリンを安価なカテキンから生産
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2016年10月13日掲載
論文名 |
Enzymatic activity ofcell-free extracts from Burkholderia oxyphila OX-01 bio-converts (+)- catechinand (−)-epicatechin to (+)-taxifolin (Burkholderiaoxyphila OX-01株の無細胞抽出液の酵素反応により(+)-カテキンと(-)-エピカテキンは(+)-タキシフォリンに変換される) |
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著者(所属) |
大塚 祐一郎(森林資源化学研究領域)、松田 元規(富山県立大学)、園木 知典(弘前大学)、伊澤 かんな(筑波大学)、Barry Goodell(Virginia Tech)、Jody Jelison(University of Massachusetts)、Ronald R. Navarro(森林総研PD)、村田 仁(きのこ・森林微生物研究領域)、中村 雅哉(森林資源化学研究領域) |
掲載誌 |
Bioscience,Biotechnology, and Biochemistry、August2016、DOI:10.1080/09168451.2016.1220822(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
カテキンは樹木が作るフラボノイドの一種で、茶葉に含まれることは広く知られています。カテキンは抗酸化作用や抗菌作用があり、その効能や生合成については多くの研究がなされています。しかし自然界でどのように分解されているのかは、その抗菌性の高さからあまりよくわかっていませんでした。森林総研ではこれまでに森林の酸性土壌から Burkholderia oxyphila OX-01という細菌を見つけ出し、この菌がカテキンを完全に分解できる新種の菌であることを報告しました(参考文献1)。 今回、このカテキン分解菌OX-01株がどのようにカテキンを分解するのか詳細に解析したところ、カテキンを2段階の酸化反応によりタキシフォリンという物質に変換して分解することを明らかにしました。さらにOX-01株から取り出した抽出液を用いることで、比較的容易かつ安定的にカテキンをタキシフォリンに変換できることを見出しました。タキシフォリンはカテキンよりも高い抗酸化作用があることが知られており、シベリアカラマツなどごく一部の樹木からしか抽出できない、非常に高価な物質です。さらに最近、京都大学においてタキシフォリンがアルツハイマー病の原因となるアミロイドβの凝集を緩和する作用があることが報告され(参考文献2)、その効果が期待されています。 今回の研究結果はカテキンが微生物によってどのように分解されているのかを明らかにしただけでなく、非常に高価で有用なタキシフォリンを安価なカテキンから生産可能であることも示しました。
参考文献1: Burkholderia oxyphila sp. nov., a bacteriumisolated from acidic forest soil that catabolizes (+)-catechin and its putativearomatic derivatives. Otsuka et al. InternationalJournal of Systematic and Evolutionary Microbiology,61(Pt2):249-54, 2011。 参考文献2: Structure–ActivityRelationship for (+)-Taxifolin Isolated from Silymarin as an Inhibitor ofAmyloid β Aggregation. Sato et al. Bioscience,Biotechnology, and Biochemistry, 77(5),1100-1103, 2013。
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