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重粒子線を使ったマツタケ品種改良技術の開発

2017年12月15日掲載

論文名

Heavy-ion beam mutagenesis of the ectomycorrhizal agaricomycete Tricholoma matsutake that produces the prized mushroom "matsutake" in conifer forests(重粒子線照射による菌根性きのこマツタケの突然変異体作出系の開発)

著者(所属) 村田 仁(きのこ・森林微生物研究領域)、阿部 知子・市田 裕之・林 依子(理化学研究所・生物照射チーム)、山中 高史(きのこ・森林微生物研究領域)、下川 知子(森林資源科学研究領域)、田原 恒(樹木分子遺伝研究領域)
掲載誌

Mycorrhiza、Springer、November 2017、 DOI:10.1007/s00572-017-0810-z(外部サイトへリンク)

内容紹介

マツタケの人工栽培は、多くの研究者がさまざまな手法で努力してきましたが、成功していません。そこで、私たちは、栽培に適した品種を作出するために、これまできのこには試されてこなかった重粒子線(高エネルギー量子ビーム)の照射をマツタケに対して行い、菌株に突然変異を起こさせることに成功しました。

重粒子線の照射は、農作物の品種改良に使われ、多くの実用品種が作出されています。本研究は、理化学研究所生物照射チームと共同で、新元素ニホニウムの発見に使われた仁科加速器センターの世界最大級の重イオン加速器を使って実施しました。マツタケ菌糸体にアルゴンの重粒子線を照射した結果、元のマツタケ菌糸と性質が異なる変異体を作出することができました。この菌株は、寒天培地上での菌叢が野生型と明確に異なり(図1)、また野生型のマツタケがあまり分解しないセルロースやアミロースを効率良く分解しました(図1)。

私たちは、今後この技術を発展させ、子実体(きのこ)を作りやすい性質を持つマツタケの突然変異株を作出することをめざしていきます。

本研究は、農林水産技術会議委託プロジェクト「高級菌根きのこ栽培技術の開発」で実施しました。本論文の著作権はSpringer Natureにあり、その許可のもと広報素材としました。


図1:野生型マツタケ菌株とその変異体の特徴

 

図1. セルラーゼ検出培地における野生型マツタケ菌株とその変異体の特徴。
変異体は、菌叢の形態が変わるとともに、色素と結合した顆粒状のセルロース基質を効率良く分解しました。

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