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日本には食材になりうる黒トリュフが2種存在する

2018年4月27日掲載

論文名

Using mating-type loci to improve taxonomy of the Tuber indicum complex, and discovery of a new species, T. longispinosum.

(交配遺伝子を用いたアジア産黒トリュフの分類関係の再検討と新種T. longispinosumの発見)

著者(所属)

木下 晃彦 (九州支所)、奈良 一秀(東京大学)、佐々木 廣海(菌類懇話会)、Feng Bang(中国科学院)、小長谷 啓介(きのこ・森林微生物研究領域)、Zhu L. Yang(中国科学院)、山中 高史(研究ディレクター)

掲載誌

PLoS ONE, 13(3): e0193745, March 2018, DOI:10.1371/journal.pone.0193745(外部サイトへリンク)

内容紹介

高級食材として知られる黒トリュフに似たトリュフが日本に自生することをご存知でしょうか?実は40年以上前から知られています。発見当初は形態的な特徴から、我が国の種はインド北部や中国南部に自生するTuber indicumと同じであるとされていました。ところが近年、著者らがそれらの遺伝情報を解析したところ、日本の黒トリュフは2つのタイプがあることがわかりました。そのためアジア産黒トリュフの分類上の関係を見直す必要が出てきました。

日本各地から採集された黒トリュフ29サンプルと、中国産黒トリュフ2種(Tuber indicum, T. himalayense)と台湾産黒トリュフ1種(T. formosanum)とについて、形態を詳細に比較し、またDNA情報に基づく分子系統解析を行いました。その結果、日本の黒トリュフ2タイプのうち1タイプは中国産のT. himalayenseと同種であることが判明し、アジアクロセイヨウショウロと名付けました。またもう1タイプは、胞子の形態やDNA情報に基づく系統群が他の種と異なることから新種と判断し、イボセイヨウショウロ(T. longispinosum)として報告しました。

今回新種として発表したイボセイヨウショウロは、高級黒トリュフとして有名な欧州産のT. melanosporumに似た香りを放つことから、食材として市場価値を持つ可能性を十分に秘めています。またアジアクロセイヨウショウロは、中国産として我が国に輸入され消費されてきたことから食材として利用できることが裏付けられています。両種とも大型になり自生地では発生量が多いことから、食用として栽培化の可能性も高く、人工栽培技術に向けた研究を進めていきます。

 

写真1:イボセイヨウショウロ(左)写真2:アジアクロセイヨウショウロ(右)

写真:見た目がそっくりなイボセイヨウショウロ(左)とアジアクロセイヨウショウロ(右)

 

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