研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2018年紹介分 > 木質バイオマスの熱電併給(CHP)事業は経済性が高い
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2018年5月17日掲載
論文名 |
未利用木質バイオマスを用いた熱電併給事業の成立条件 |
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著者(所属) |
久保山 裕史(林業経営・政策研究領域)、古俣 寛隆(北海道立総合研究機構森林研究本部林産試験場)、柳田 高志(木材加工・特性研究領域) |
掲載誌 |
日本森林学会誌、99巻6号、226-232、日本森林学会、2017年12月、DOI:10.4005/jjfs.99.226(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
近年、日本で運転を開始した未利用木質バイオマス発電施設の多くは、発電効率が25%前後と低く、設備コストや燃料コストが高いため、高い経済性を確保するのは容易ではありません。一方、電力だけでなく熱も利用可能な熱電併給(CHP:Combined Heat and Power)事業ならば、小中規模でも経済性を高められる可能性があります。これを明らかにするために、CHP評価ツールを開発しました(無償公開中:http://www.ffpri.affrc.go.jp/database/hatsuden/hatsuden.html)。CHP評価ツールを用いて、4つの発電規模(1,200、1,600、1,999、5,700kW)を対象に、1)発電のみ、2)蒸気利用のCHP、3)温水利用のCHPの3種類の事業について内部収益率等を推計しました。売熱単価は、重油価格を参考に7.7円/kWhと5.2円/kWhの2通りとしました。推計の結果、a)小中規模の場合、発電だけを行うよりも、熱利用を行うCHP事業の方が経済性は高くなる、b)1,200kWの場合、発電効率が低下するため、売熱単価が低い場合にはCHP事業を行っても採算が取れない、c)CHP事業では、発電量が大きく低下する蒸気利用よりも、発電量の低下が少ない温水利用の方が経済性が高い、d)CHP事業を実際に行うためには、地域にある大きな病院やホテル等の熱多消費事業体を複数まとめた熱需要が必要であることが明らかとなりました。そうした事業体に熱を販売しながら木質バイオマス発電を行えば、経済性の高い持続可能な事業運営を行うことができるので、地域振興に大きく貢献できます。
図:発電規模と売熱単価別のシミュレーション結果 発電規模が1,200~1,999kWの場合、いずれの熱利用方法においても、発電だけを行うよりも内部収益率は高くなっており、経済性はCHP事業の方が高いことがわかります(赤字の内部収益率は正しく計算できないので-1%としています)。ただし、熱利用量は、4,333~6,296熱kWと大きく、需要の集約が課題といえそうです。 |
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