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中層大規模木造建築物に用いる木質面材料の接合強度を解明

2018年8月24日掲載

論文名

各種構造用面材を用いた釘接合部の一面せん断特性と変形性状の把握

著者(所属)

小川 敬多・原田 真樹(構造利用研究領域)、渋沢 龍也・宮本 康太(複合材料研究領域)

掲載誌

木材学会誌、64巻4号、日本木材学会、2018年7月、DOI:10.2488/jwrs.64.139(外部サイトへリンク)

内容紹介

近年、中層大規模木造建築物建設への期待の高まりを背景に、より優れた強度性能を持つ部材の開発が求められています。充腹梁など、面材料と軸材料を組み合わせた組立部材の開発はその方策のひとつとして考えられますが、開発にあたって面材料―軸材料間の接合部のせん断性能(注1)を知ることが必要です。この場合の接合方法としては、釘(くぎ)を用いることが一般的です。そこで、中層大規模木造建築物の組立部材での利用を想定した、釘接合部のせん断性能を明らかにしました。

面材料(構造用合板4種類、中密度繊維板(MDF)1種類、パーティクルボード1種類)と木材(スギ材、カラマツ材)をCN75釘(注2)で接合した試験体のせん断性能を調べました。面材料の種類の違いによる強度性能が明らかになり、例えばカラマツ合板やパーティクルボードを用いた接合部は他の面材のものより高い強度を示しました。また、加力によって接合部が変形する様子を観察し、一般住宅等で多用されてきたCN50釘と違って、CN75釘では釘の引き抜けによる耐力低下が生じにくいことが明らかになりました。

このような知見は、優れた強度性能を持つ部材の開発に資する成果で、木造の中層建築物や大規模建築物の建設推進に寄与します。

 

(注1)接合された二材間ですべりが生じる負荷に対する耐荷重性能。
(注2)日本工業規格(JIS)の「太め鉄丸くぎ」のひとつ(胴部の直径3.76mm、長さ76.2mm)。一般住宅の面材・軸材料間の接合に用いられるCN50(胴部の直径2.87mm、長さ50.8mm)より太くて長い。

 

図1 面材料と軸材料を組み合わせた組立部材の例

図1 面材料と軸材料を組み合わせた組立部材の例(充腹梁)。
釘を用いて面材料を軸材料(軸組)に張り付けたもので、高い強度性能が期待できます。

 

図2 釘接合部のせん断性能を調べる要素実験
図2 釘接合部のせん断性能を調べる要素実験。
軸材料の上部から図の下向きに荷重を与えて、面材料と軸材料の間でのすべりを生じさせています。

 

図3 荷重とすべり量の関係の一例

図3 荷重とすべり量の関係の一例(軸材料にスギを用いたもの)。
荷重の増大により、釘接合部ですべり量が増加する様子を示しています。また、面材料の種類によって、荷重―滑り量の関係が異なっています。

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