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雨の侵食力は降ってくる雨の多さと枝の高さによって決まる

2018年9月10日掲載

論文名

Factors influencing the erosivity indices of raindrops in Japanese cypress plantations.(ヒノキ人工林の雨滴侵食力に影響を与える要因)

著者(所属)

篠原 慶規(宮崎大学・九州大学)、市野瀬 桐香・森本 麻友美・久保田 哲也(九州大学)、南光 一樹(森林防災研究領域)

掲載誌

Catena、171、54-61、December 2018、DOI:10.1016/j.catena.2018.06.030(外部サイトへリンク)

内容紹介

ヒノキはわが国の人工林の主要樹種の一つです。ヒノキの落葉は細かく分離しやすく地面を保護する効果が弱いため、過密なまま育っているヒノキ人工林では下層植生による保護も少なくなり、林内で土壌侵食が起きる問題が生じています。林内に降る雨(樹冠通過雨)は場所による量のばらつきが大きく、森林によって樹冠からポタポタと落ちてくる大きな雨滴のでき方も違うため、林内の雨滴の侵食力がどのように決まっているのかがわかっていませんでした。

そこで、たくさんの地点で雨滴の侵食力を測るためにスプラッシュカップという装置を500個以上作りました。雨滴衝撃によって、砂を敷き詰めたカップから砂の一部が飛び出します。カップから減った砂の量から、そこに降った雨のエネルギーを推定するものです。この装置を用いることで、森林内において雨滴衝撃力が大きく、侵食の危険性が高い場所の条件を詳しく知ることが可能になりました。7つの異なるヒノキ人工林で測定したところ、ヒノキの樹高が十分に高い(15m以上)場合には樹冠通過雨が多く降る場所ほど雨滴の侵食力が大きくなりました。一方で、樹高があまり高くない場合は、樹冠通過雨の量だけではなく、最下層の枝の高さが影響し、枝が低い場所ほど雨滴の侵食力が小さくなりました。これは雨滴の落下距離が短すぎて、雨滴の落下速度が未熟なままカップに衝突したためだと考えられます。

林内の土壌侵食を考える場合、降ってくる雨の量の空間的なばらつきだけでなく、樹高や枝の高さが重要であることが改めて明らかになりました。森林総研では、このような新たな手法も活用しながら、ヒノキ人工林の成長に伴う土壌侵食リスクの変化の予測や、森林の土壌保持機能を十分に発揮するための森林管理手法について研究を行っています。


写真:降雨前のスプラッシュカップ 写真:降雨後のスプラッシュカップ

写真:降雨前(左)と降雨後(右)のスプラッシュカップ(撮影者:市野瀬 桐香)

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