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コンピュータを用いた直交集成板(CLT)の強度性能シミュレーション

2018年12月19日掲載

論文名

モンテカルロ法による直交集成板の引張り強度分布推定

著者(所属)

小川 敬多・井道 裕史・原田 真樹・長尾 博文・加藤 英雄(構造利用研究領域)、宮武 敦(複合材料研究領域)

掲載誌

材料 67巻 12号 1087-1093、公益社団法人日本材料学会、2018年12月15日発行

内容紹介

直交集成板(CLT)とは、木材の挽き板(ラミナ)を各層の繊維方向が直交するように敷き並べて積層接着した新しい木質材料で、厚く大きな板材として木質構造の床や壁に用いられます。このCLTは中高層建築物への活用も期待されているところですが、構造用材料としての強度性能の把握がとても重要です。木材は樹種や産地、個体によって強度が異なります。したがって、CLTも使用するラミナによって強度が変化しますので、正しい強度性能を知るためには、それぞれ強度試験して確かめることが理想的です。しかしながら、CLTは厚く大きいことが特徴ですので、試験には大きな装置と手間暇がかかってしまいます。

そこで、実物の試験に依らずに、コンピュータ上でCLTの強度性能を推定する手法を構築しました。ここでは、ラミナの強度評価試験機(既に構造用集成材の製造機械に組み込まれているもの)で得られる試験結果を利用して、CLTの引張り強度性能を推定しました。評価済みのラミナの強度データを用いて、モンテカルロ法(注)によりコンピュータ上で仮想的にCLTを作り、引張り破壊モデルに基づいて強度の推定値を算出しました。この操作を2000回繰り返して、仮想的に2000体のCLTの引張り強度を求め、その分布を得ました。これらはパソコン上で行われるため、実際には試験を行わずに大量の試験体の引張り強度のデータを得ることができます。また、実際にCLT試験体を用いた破壊試験を実施し、推定結果は破壊試験で得られる結果と同じとみなせることを確認しました。

このような研究によってCLTの強度性能が解明されることで、CLTの活用の促進につながります。

(注)乱数を用いたシミュレーションで推定値を求める方法で、コンピュータの発達により多くの分野で活用されている。


図1:CLTの引張り強度の分布

図1 ラミナの引張り試験結果を用いて、CLTの引張り強度の分布をコンピュータの計算により推定する手法を構築しました。また、実際にCLT試験体を用いた破壊試験を実施し、推定結果は破壊試験で得られる結果と同じとみなせることを確認しました。

 

図2 累積頻度において、推定結果と試験結果を比較

図2 CLTの引張り強度の分布(累積頻度)において、推定結果と試験結果を比較しました。両結果は概ね一致しており、推定手法が妥当なものであることが確認できました。

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