研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2019年紹介分 > 捕食性線虫の新種を発見 ―生物防除資材としての可能性をさぐる―
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2019年2月4日掲載
論文名 |
Seinura caverna n. sp. (Tylenchomorpha: Aphelenchoididae) an androdioecious species isolated from bat guano in a calcareous cave.(鍾乳洞のコウモリグアノから検出された雌雄同体線虫の新種、Seinura caverna) |
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著者(所属) |
神崎 菜摘(関西支所)、浴野 泰甫(鹿児島大学/佐賀大学)、升屋 勇人(きのこ・森林微生物研究領域) |
掲載誌 |
Nematology、21:207-225、Brill、DOI: 10.1163/15685411-00003207(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
線虫類には多くの有害種(農林業害虫、人畜寄生虫)、有益種(モデル生物、生物防除資材)が含まれています。これらの有害種の防除や有益種の有効利用のためには、どのような線虫種がどこに存在しているのかを理解する必要があります。そのために実施した、線虫種の多様性調査の過程で、鍾乳洞に堆積したコウモリのグアノ(糞)から、線虫を捕食する線虫の新種を発見しました。 捕食性線虫は、一般に培養が難しく、これまでに安定した培養系は確立されていませんでした。しかし、今回は、餌となる線虫種を適切に選ぶことにより、培養に成功し、Seinura caverna として、新種記載を行いました。また、この線虫の生物学的性質を調査したところ、線虫捕食性の他に、雌雄同体(注1)という特徴を持つことが明らかになりました。 雌雄同体の線虫種は、1個体から増殖することができるため、遺伝学的解析や、遺伝子操作を行いやすいという利点があります。これにより、捕食関連遺伝子の進化など、捕食性線虫のモデル研究材料としての利用が期待されます。また、食性の調査では、マツ材線虫病の病原体、マツノザイセンチュウを含む多くの線虫種を効率よく捕食できることが確認されました。このことから、現在、有害線虫を対象とした生物防除資材としての利用の可能性を調査しています。 注1:一個体の中で精子と卵子の両方を生産する。 (本研究は2019年2月1日にNematology誌にオンライン公表されました。)
写真1:餌線虫(Acrobeloides sp.: 右)を捕食する捕食性線虫の新種(Seinura caverna :左) |
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