研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2019年紹介分 > 木材から食品も作り出せる新時代の処理技術
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2019年3月6日掲載
論文名 |
Simultaneous enzymatic saccharification and comminution for the valorization of lignocellulosic biomass toward natural products. (リグノセルロースバイオマスを有機製品へと有効活用するための同時糖化湿式粉砕システム) |
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著者(所属) |
Ronald R.Navarro・大塚 祐一郎・野尻 昌信(森林資源化学研究領域)、石塚 成宏(立地環境研究領域)、中村 雅哉(森林資源化学研究領域)、敷中 一洋(産業技術総合研究所)、松尾 健司(広島大学)、佐々木 慧・佐々木 健(広島国際学院大学)、金原 和秀(静岡大学)、中島田 豊・加藤 純一(広島大学) |
掲載誌 |
BMC Biotechnology、18:79、Springer Nature、2018年12月、DOI:10.1186/s12896-018-0487-1(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
木材は主要成分であるセルロース、ヘミセルロース、リグニンと微量に含まれる抽出成分で構成されていますが、これらの成分は固い細胞壁を形成しているため、それぞれを分離して利用するためには薬剤処理や水熱処理が必要でした。その薬剤処理や水熱処理は環境負荷が強いだけでなく、木材成分との副反応により有害な物質が生じることから木材成分の用途は限定されています。これまでに森林総研では薬剤処理や水熱処理を必要としない新しい木材の処理技術として「同時糖化湿式粉砕処理」(SESC)技術を開発していました。これは水の6倍の比重を持つビーズを用いて木材を水中で1/1000mm以下にすりつぶすことで細胞壁から繊維成分であるセルロースとヘミセルロースを露出させると同時に酵素分解によりブドウ糖やキシロースなどの糖にまで分解して可溶化する技術です。またもう一つの主要成分であるリグニンは残渣として回収されます。図に示すように、この処理によって得られるブドウ糖やキシロースなどの糖成分は糖として利用できるだけでなく、微生物発酵によりメタンガスやアルコール、乳酸、酢酸などを製造することができます。また残渣として得られるリグニンは新しい機能性素材としての利用や化学分解と微生物発酵により工業原料を製造することも可能です。 今回は、同時糖化湿式粉砕処理の最適処理条件を決定し、さらにスケールアップしても問題なく処理できること、得られた糖液は直接発酵可能であることを明らかにしました。また食品加工用の水、添加物のみでも処理・発酵が可能であることも確認しました。これは、これまで木材の用途としては考えにくかった食品への応用も可能になることを示しています。森林総合研究所では本技術を応用して、世界初の「木のお酒」を目的として木材から木の香り豊かなアルコールの試験製造を開始しています。 (本研究は2018年12月12日にBMC Biotechnology誌にオンライン公表されました。)
図:同時糖化湿式粉砕処理(SESC)による木材の新しい利用展開 |
お問い合わせ先 |
【研究推進責任者】 森林総合研究所 研究ディレクター 真柄 謙吾 【研究担当者】 森林総合研究所 森林資源化学研究領域 大塚 祐一郎 【広報担当者】 森林総合研究所 広報普及科広報係 【取材等のお問い合わせ】 相談窓口(Q&A)E-mail:QandA@ffpri.affrc.go.jp 電話番号:029-829-8377(受付時間:平日9時30分~12時、13時~16時30分) |
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