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希少樹種の現地外保全は、植えただけでは終わらない

2019年7月8日掲載

論文名

ヒメバラモミ遺伝資源林における設置7年後の生存率と成長

著者(所属)

勝木 俊雄(多摩森林科学園)、大野 裕康・井上 日呂登(中部森林管理局)

掲載誌

森林遺伝育種、8巻2号、69-77、森林遺伝育種学会、2019年4月 DOI:10.32135/fgtb.8.2_69(外部サイトへリンク)

内容紹介

マツ科トウヒ属のヒメバラモミの推定個体数は2,000本以下と少なく、国の絶滅危惧II類に指定されているため、2010年に中部森林管理局はヒメバラモミ遺伝資源林を設置しました。遺伝資源林には、ほぼ分布域全体から採取した穂木から増殖された接木苗が、産地により区分されて植栽(現地外保全)されています(北区:9産地69クローン、南区:9産地65クローン)。森林総合研究所では、中部森林管理局と共同で生存率や樹高を調査してきました。

植栽7年後の全体の累積枯死率は20%、平均樹高は228cmに成長し、ほぼ順調に生育していることが確認されました。しかし、南区は2015-2017年の平均枯死率が1.9% y-1と北区の0.3% y-1より高い数値で、このままでは2050年までに植栽時の372本から139本に、65クローンから51クローンに減少することが予想されました。

この減少を回避するため、現在遺伝資源林で成長している若木から穂木を採取し、新たに再増殖した苗木を補植することで保有クローン数の維持が可能と考えられました。このことは、継続性のある現地外保全のために、遺伝資源林の定期的な調査管理が極めて重要であることを示しています。

(本研究は2019年4月25日に森林遺伝育種誌にオンライン公表されました。)

 

写真:樹高2m以上に成長したヒメバラモミの接木苗木

写真:樹高2m以上に成長したヒメバラモミの接木苗木(2017年9月14日)

 

図:ヒメバラモミ遺伝資源林における総個体の生存本数と平均樹高の年変化

図:ヒメバラモミ遺伝資源林における総個体の生存本数(棒グラフ)と平均樹高(曲線)の年変化。樹高の高低線は標準偏差を示す。

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