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γ線照射はマツタケの性質を変える

2019年8月5日掲載

論文名

Conversion from mutualism to parasitism: a mutant of the ectomycorrhizal agaricomycete Tricholoma matsutake that induces stunting, wilting and root degeneration in seedlings of its symbiotic partner Pinus densiflora in vitro(共生から寄生への変換:共生相手のアカマツを枯らすマツタケ突然変異体の作出)

著者(所属)

村田 仁・仲野 翔太(きのこ・森林微生物研究領域)、山中 高史(研究ディレクター)、下川 知子(森林資源化学研究領域)、阿部 知子・市田 裕之・林 依子(理化学研究所・生物照射チーム)、田原 恒(樹木分子遺伝研究領域)、太田 明(滋賀県琵琶湖環境科学センター)

掲載誌

Botany、97(8):463–474、Canadian Science Publishing、July 2019 DOI:10.1139/cjb-2019-0060(外部サイトへリンク) (online 2019年6月6日、print 2019年7月29日)

内容紹介

マツタケは、アカマツなどのマツ科樹種に共生し、生きた植物が供給する光合成産物を根で利用して生育しています。木材等を分解して栄養にしているシイタケやエノキタケなどは、木粉などを使った菌床培地で栽培できますが、マツタケは木材の分解能力が低く、これまで菌床培地を用いた栽培に成功していません。私たちは、マツタケ培養菌糸に放射線等を照射することでマツタケの性質を変えて菌床栽培が可能なマツタケ菌株の作出に取り組みました。

本研究では、農研機構次世代作物開発研究センター放射線育種場にて、γ線をマツタケ培養菌糸に照射することで、分解能力を獲得したマツタケの変異体G1株を得ることができました。この変異株は、セルラーゼやアミラーゼなどの分解酵素活性が野生株より著しく高く、菌床培地で良好に生育しました(図1)。また、通常は、共生関係にあるアカマツ苗の成長を阻害することも分かりました(図1)。今後は、この変異株の遺伝特性を解析するとともに、引き続き、新たな変異株の獲得を目指します。

(本研究は2019年6月6日にBotany誌にオンライン公表されました。)

 

図1 マツタケ野生株NBRC 33136とその変異体G1の特性

図1. マツタケ野生株NBRC 33136とその変異体G1の特性。(左)菌叢と分解酵素活性。(右上)アカマツ実生苗への影響。(右下)押し麦培地を使った菌床。

お問い合わせ先
【研究推進責任者】
森林総合研究所 研究ディレクター 山中 高史
【研究担当者】
森林総合研究所 きのこ・森林微生物研究領域 村田 仁
【広報担当者】
森林総合研究所 広報普及科広報係
【取材等のお問い合わせ】
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