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難燃処理木材の使用中に生じる薬剤の分布ムラは防火性能に影響しない

2019年8月8日掲載

論文名

難燃処理木材の板厚方向の薬剤分布が燃焼性状に及ぼす影響

著者(所属)

髙瀨 椋・上川 大輔(木材改質研究領域)、長谷見 雄二(早稲田大学)、松山 賢(東京理科大学)

掲載誌

日本建築学会環境系論文集、84(762)、709-717、2019年8月 DOI:10.3130/aije.84.709(外部サイトへリンク)

内容紹介

公共建築物等の内装木質化が進む中、火災時に炎や熱を出さないよう木材中に難燃薬剤を注入した木材(難燃処理木材)が広く用いられるようになってきました。しかしながら、使用する環境によっては、使用中に空気中の水分によって薬剤が材面に浮き出る(白華)ことがあります。このような場合、厚さ方向の薬剤の分布にムラが生じ、製造当初に期待された防火性能が「火災時に発揮されないのではないか?」との懸念がありました。

そこで、薬剤の分布ムラが防火性能におよぼす影響を明らかにするため、薬剤を板厚方向に均一に分布させた難燃処理木材と、材表面に薬剤を局在させた難燃処理木材を意図的に作り分けて燃焼試験を行い、燃え拡がり方を比較しました。その結果、材内の厚さ方向に薬剤ムラがあっても、燃え拡がりは薬剤が均一に分布している場合と同様に抑えられることが明らかになりました。

火災時には人が安全に避難できるよう燃え拡がりを防ぐことが大切です。本研究により、難燃処理木材の板厚方向の薬剤の分布ムラは、燃え拡がりに影響しないという知見が得られたことから、雨がかかったり結露しない環境で使用されている難燃処理木材については、白華が生じていても火災時に十分な防火性能を発揮することが示唆されました。もちろん、白華そのものを防いで美観を保つには、保護塗装などの対策も欠かせません。

(本研究は2019年8月に日本建築学会環境系論文集に公表されました。)

 

写真:模型箱試験での燃え拡がりの様子、グラフ:模型箱試験の試験開始10分時の室内の温度

写真:模型箱試験での燃え拡がりの様子

グラフ:模型箱試験の試験開始10分時の室内の温度

各材料で仕上げた居室を再現した模型箱(内寸は幅84cm、長さ168cm、高さ84cm)を製作し、ごみ箱程度の火源から壁や天井への燃え拡がりを比較しています。無処理材では部屋の外まで火炎が噴出するように激しく燃焼しますが、難燃処理を施したものは、いずれも燃え拡がりを抑制できました。

お問い合わせ先
【研究推進責任者】
森林総合研究所 研究ディレクター 原田 寿郎
【研究担当者】
森林総合研究所 木材改質研究領域 髙瀨 椋
【広報担当者】
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