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2020年7月17日掲載
論文名 |
Transcriptome analysis of heat stressed seedlings with or without pre-heat treatment in Cryptomeria japonica (前熱処理あり、なしのスギ実生の高温ストレス下でのトランスクリプトーム解析) |
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著者(所属) |
伊原 徳子(樹木分子遺伝研究領域) |
掲載誌 |
Molecular Genetics and Genomics、Springer、2020年5月、 DOI:10.1007/s00438-020-01689-3(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
地球温暖化により将来的に夏の異常高温の頻度が増加して、植物に様々な影響を及ぼすことが予想されます。植物の異常高温への適応の一つとして、高温馴化という現象が知られています。これは、あらかじめ高温を経験した植物は、その後高温に対してより強くなるという現象で、被子植物で知られてきています。針葉樹にも高温馴化の能力があることが示されており、今回、その分子的なメカニズムの解明に向け、関連する遺伝子の特定に取り組みました。 25℃で育てたスギ実生に38℃の高温による前処理を行った後、45℃の高温処理を行い、それにより発現する遺伝子を網羅的に収集しました。前処理を行わずに、45℃高温処理を行った場合と比較すると、外見上は両者に大きな違いは認められませんでしたが(写真)、45℃処理に対する応答が変化する遺伝子があることがわかりました。これらの中には、遺伝因子の1種であるレトロトランスポゾンもありました(図)。レトロトランスポゾンは、その活性化が植物の環境ストレスへの馴化に関連していることが近年示されてきており、スギの高温への馴化でもなんらかの働きを持つ可能性があります。 本研究で特定されたこれらの遺伝子をさらに詳細に調べ、針葉樹の高温への馴化メカニズムを解明していきます。 (本研究は2020年5月にMolecular Genetics and Genomicsで公表されました。)
写真:45℃での高温処理を行ったスギ実生。左:38℃前処理なし、右:38℃前処理あり。
図:45℃高温処理に対するスギの高温ストレス応答遺伝子の反応 |
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