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ヤマドリタケモドキの胞子液はカシ苗の成長を促進させた

2020年10月16日掲載

論文名

Growth and nutrient acclimation of evergreen oak seedlings infected with Boletus reticulatus in infertile colluvial soil in warm temperate monsoon Asia: evaluation of early growth (温帯モンスーンアジアの貧栄養崩積土におけるヤマドリタケモドキを感染させた常緑カシ苗の成長と養分順化:初期成長の評価)

著者(所属)

香山 雅純(植物生態研究領域)

掲載誌

Forests、11(8)、870、August 2020 DOI:10.3390/f11080870(外部サイトへリンク)

内容紹介

照葉樹林の主要な樹種である常緑性のカシ類は、外生菌根菌と呼ばれるキノコの一種と共生関係を結んでいます。この外生菌根菌の胞子(植物で言う種子)は植物の根に共生し、リンや窒素などの養分や水分の吸収を助ける働きがあります。このため、植栽前の苗木に菌を接種すると、苗木の成長が促進されることが知られています。しかし、接種するための菌根菌の分離や培養などに高価な機器が必要で、簡単に接種を行うことができませんでした。

本研究では、照葉樹林に頻繁に発生する外生菌根菌のヤマドリタケモドキの胞子を用いた、カシ類(アカガシ、アラカシ、ウラジロガシ)への簡便な接種方法を開発し、苗木の成長に及ぼす効果を明らかにしました。先ず、滅菌土壌を詰めたポットにカシ類の種子を埋め、実生を育成しました。次に、ヤマドリタケモドキの子実体(傘の部分)を3cm角程度に刻んでガーゼに入れ、それを滅菌水中で搾り、水中に出てきた胞子を集めて胞子液を作りました。この胞子液をポットに詰めた土壌に注いで、簡便に接種を行いました。その結果、6ヶ月後には、非接種苗に比べて接種苗の成長が促進されることが確認できました。本研究は外生菌根菌を活用した造林技術の向上に貢献します。

 

(本研究は2020年8月にForestsで公表されました。)

 

写真1:カシ林に発生したヤマドリタケモドキの子実体

写真1:カシ林に発生したヤマドリタケモドキの子実体。

 

写真2:ヤマドリタケモドキを接種して6ヶ月育成したアカガシ実生
写真2:ヤマドリタケモドキを接種して6ヶ月育成したアカガシ実生。

(左2つは崩積土、右2つはスギ林土壌。それぞれの土壌で、接種苗(左から2番目と4番目)は非接種苗(左から1番目と3番目)より大きく成長しました。

お問い合わせ先

【研究推進責任者】
森林総合研究所 研究ディレクター 宇都木 玄
【研究担当者】
森林総合研究所 植物生態研究領域 香山 雅純
【広報担当者】
森林総合研究所 広報普及科広報係
【取材等のお問い合わせ】
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