研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2020年紹介分 > 重イオンビーム照射は、マツタケの育種に役立つ

ここから本文です。

重イオンビーム照射は、マツタケの育種に役立つ

2020年12月1日掲載

論文名

Argon-ion beam induced mutants of the ectomycorrhizal agaricomycete Tricholoma matsutake defective in beta-1,4 endoglucanase activity promote the seedling growth of Pinus densiflora in vitro(アルゴンイオンビーム照射で作出したマツタケセルラーゼ活性欠損変異体はアカマツの実生苗の生長を促進する)

著者(所属)

村田 仁・仲野 翔太(きのこ・森林微生物研究領域)、山中 高史(研究ディレクター)、下川 知子(森林資源化学研究領域)、阿部 知子・市田 裕之・林 依子(理化学研究所・生物照射チーム)、田原 恒(樹木分子遺伝研究領域)

掲載誌

Botany、Canadian Science Publishing、2020年10月 DOI:10.1139/cjb-2020-0076(外部サイトへリンク)

内容紹介

マツタケはマツ科などの樹木が光合成で生産した糖を、菌根と呼ばれる共生器官を通して得て生育し、子実体(きのこ)をつくります。私たちは、マツタケの人工栽培に適した菌株の選抜に向けて、重イオンビーム照射によって様々なマツタケ変異体を作出してきました。

本研究では、重イオンの一種、アルゴンイオンを照射し、セルラーゼ活性の完全な欠損を指標に、マツタケ変異体2菌株を選抜しました。そして、この2菌株は、菌根共生したアカマツ実生苗の成長を野生株(親株)より促進することがわかりました(図1)。このような形質を有するマツタケ菌株は今まで報告がありません。これまでに得られた変異体の中には、セルラーゼ活性が野生株より高くアカマツ実生苗を枯らすものがありました。このことから、セルラーゼ活性が菌根共生機構に影響を及ぼしている可能性があります。

このように、重イオンビーム照射は、野生株にはない様々な特性を有するマツタケ変異体を作り出すものであり、人工栽培化だけでなく樹木との共生機構の解明に向けて有効なツールとなりうるものであることがわかりました。

 

(本研究は2020年10月にBotanyで公開されました。)

 

図1:マツタケ突然変異体とアカマツ実生苗への成長促進効果

 

図1:セルラーゼ活性を完全に失った(CEL-)マツタケ突然変異体Ar5002株とAr5012株の作出とアカマツ実生苗への成長促進効果。

お問い合わせ先

【研究推進責任者】
森林総合研究所 研究ディレクター 山中 高史
【研究担当者】
森林総合研究所 きのこ・森林微生物研究領域 村田 仁
【広報担当者】
森林総合研究所 広報普及科広報係
【取材等のお問い合わせ】
相談窓口(Q&A)E-mail:QandA@ffpri.affrc.go.jp
電話番号:029-829-8377(受付時間:平日9時30分~12時、13時~16時30分)

お問い合わせ

所属課室:企画部広報普及科

〒305-8687 茨城県つくば市松の里1

電話番号:029-829-8377

FAX番号:029-873-0844